夜中に目を覚ました赤ちゃんと、寄り添う親のやさしいイラスト
THE SCIENCE

生後半年の赤ちゃんの6割は、まだ朝まで眠っていない。「睡眠退行」は異常ではなかった

急に夜泣きが増える「睡眠退行」は、病気でも育て方のせいでもなく、正常な発達の一部です。生後6か月の赤ちゃんの約57%は朝まで通して眠っておらず、それが発達や母親の気分に悪影響を与えないことも分かっています。赤ちゃんの夜泣きの科学を、論文と反証から解説します。

ILLUSTRATION / SUIMIN LAB

急に夜泣きが増える「睡眠退行」は、病気でも育て方のせいでもありません。脳や体が育つ過程で起きる、正常な変化です。生後6か月の赤ちゃんの約57%は、まだ朝まで通して眠っていません[1]。「うちの子だけ眠らない」と感じているなら、それは思い込みかもしれません。

夜中に起きるのは、多くの赤ちゃんにとって当たり前のことです。

睡眠退行とは

睡眠退行とは、それまで眠れていた赤ちゃんが、急に夜泣きや頻繁な目覚めを見せる時期を指す育児用語です。生後4か月・8〜10か月ごろなどに「起きやすい」とされますが、これは医学的な病名ではありません。

寝返り・はいはい・人見知りなど、脳と運動の発達が一気に進む時期に重なります。発達のジャンプが、いったん眠りを乱すと考えられています。

夜中に起きるのは異常なのか

「朝まで眠らない=問題」と思いがちですが、研究はそうではないと示しています[1]

つまり、夜通し眠れないからといって、赤ちゃんの成長を心配する必要はありません。眠りの個人差は、もともととても大きいのです[2]

親の育て方のせいなのか

自分を責める必要はありません。背景には文化的な傾向もあります[3]

日本の赤ちゃんは、もともと夜中に起きやすい環境にあるとも言えます。「眠らないのは自分のせい」ではなく、文化や発達の特徴が大きいのです。

心配したほうがいい場合もある

ほとんどは正常ですが、例外もあります。

迷ったら相談してよいのです。多くの場合「問題ありません」と言ってもらえること自体が安心になります。

夜泣きの時期を乗り切るために

この記事のまとめ

  • 「睡眠退行」は病名ではなく、発達が進む時期に起きる正常な変化
  • 生後6か月でも約57%の赤ちゃんが朝まで通して眠っていない(Pennestri et al., 2018)
  • 夜通し眠るかどうかは、その後の発達や母親の気分とは関係がなかった
  • 日本を含むアジアの赤ちゃんは夜に起きやすい傾向。育て方のせいではない(Mindell et al., 2010)
  • 呼吸が止まる・体重が増えない・日中もぐったりが続くときは小児科に相談

参考文献と反証

各論文の「主な結果」とあわせて、相反する結果や限界(反証)も併記しています。 集団タグは研究対象(日本人/欧米など)を示します。

  1. [1]Pennestri MH, Laganière C, Bouvette-Turcot AA, et al. (2018). Uninterrupted Infant Sleep, Development, and Maternal Mood. Pediatrics.欧米対象 縦断コホート / 母子388組を6・12・36か月で追跡

    結果生後6か月で約57%、12か月でも約43%の赤ちゃんが、6時間続けて眠っていなかった。そして朝まで眠るかどうかは、その後の発達や母親の気分とは関係がなかった。夜中に起きるのは普通のこと。

    反証観察研究で対象も限られる。発達の指標は限られた検査で、長期の影響まで見たわけではない。

    doi:10.1542/peds.2017-4330
  2. [2]Galland BC, Taylor BJ, Elder DE, Herbison P (2012). Normal sleep patterns in infants and children: a systematic review of observational studies. Sleep Medicine Reviews.総説・メタ解析 システマティックレビュー / 0〜12歳・34研究

    結果乳児の睡眠時間や夜中に起きる回数には大きな幅がある。夜間覚醒は月齢とともに減る傾向にあるが、個人差が大きく、「何回までが正常」と一律には言えない。

    反証親の記録や質問紙に基づくデータが多く、客観的な計測ではない。文化や寝かせ方の違いも反映されている。

    doi:10.1016/j.smrv.2011.06.001
  3. [3]Mindell JA, Sadeh A, Wiegand B, How TH, Goh DYT (2010). Cross-cultural differences in infant and toddler sleep. Sleep Medicine.東アジア対象 国際調査 / 0〜36か月の乳幼児29,287人(日本を含む)

    結果アジアの国々(日本を含む)の乳幼児は、欧米に比べ就寝が遅く、総睡眠時間が短く、親が「睡眠の問題」と感じる割合が高かった。日本は総睡眠時間が最も短い部類(平均11.6時間)だった。

    反証親の主観的な回答に基づく調査。文化による「問題」のとらえ方の違いも含まれる。

    doi:10.1016/j.sleep.2009.04.012

よくある質問

睡眠退行とは何ですか?

睡眠退行とは、それまで眠れていた赤ちゃんが急に夜泣きや頻繁な目覚めを見せる時期を指す、育児上の言葉です。医学的な病名ではなく、脳や運動の発達が進む時期に起きやすい正常な変化です。

夜中に何度も起きるのは異常ですか?

異常ではありません。生後6か月でも約57%の赤ちゃんが朝まで通して眠っていません。夜間に起きるのは発達の途中ではごく普通で、その後の発達や成長に悪影響を与えないことが分かっています。

親の育て方が悪いのでしょうか?

いいえ。夜泣きや睡眠退行は育て方のせいではありません。脳の発達や睡眠リズムの変化が背景にあります。日本を含むアジアの赤ちゃんは夜中に起きやすい傾向もあり、自分を責める必要はありません。

この記事について

文:眠りの科学 編集部

本記事は上記3本の文献に基づきます。新しい研究や反証が出た場合は更新日を改めて反映します。 内容は一般的な情報提供であり、症状がある場合は医療機関にご相談ください。