食卓に並ぶ野菜・魚・果物と、深い眠りの波形を重ねたイラスト
HABITS

食べたもので、その夜の眠りの深さは変わっていた。食物繊維が多い日ほど深く眠れる

何を食べたかは、その夜の眠りの深さや寝起きを左右します。食物繊維が多い日は深い眠りが増え、飽和脂肪や糖が多い日は眠りが浅く、夜中に目覚めやすくなりました。日本人の研究でも、野菜や魚が少なく菓子・麺類が多い食事は睡眠の質の低さと関連します。ただし多くは相関で、食べれば必ず眠れるわけではありません。

ILLUSTRATION / SUIMIN LAB

何を食べたかは、その夜の眠りの深さや寝起きを左右します。食物繊維が多い食事の日は深い眠りが増え、飽和脂肪や糖質が多い日は眠りが浅くなり、夜中に目覚めやすくなりました[1]。日本人の研究でも、野菜や魚が少なく菓子・麺類が多い食事は、睡眠の質の低さと関連しています[7][8]

ただし最初に断っておくと、「これを食べれば必ず眠れる」と言える強い証拠はまだありません。多くは観察研究や小さな試験で、相関と因果は分けて考える必要があります。

食べたもので、その夜の眠りは変わるのか

変わります。食事の中身、とくに食物繊維・脂質・糖質のバランスが、眠りの深さと夜中の目覚めに関係することが、実験で示されています[1]

ポイントは、特定の一品ではなく食事全体の質です。野菜・果物・全粒穀物・豆など繊維の多い食品を中心にし、脂っこい食事や甘いものに偏らないことが、深い眠りにつながります。

炭水化物は寝つきを早めるのか

炭水化物は、とり方しだいで寝つきを助けることがあります。血糖を上げやすい高GIの食事を、就寝の数時間前にとると寝つきが早まったという報告があります[2]

ただし、これを「夜食べれば眠れる」と一般化はできません[2]

トリプトファンが多い食品を食べれば眠れるのか

トリプトファンは、睡眠ホルモン(メラトニン)やセロトニンの材料になるアミノ酸です。これを補えば眠れる、と語られがちですが、話はそれほど単純ではありません[3]

問題は、この「1g以上」を普通の食事で摂るのは難しいことです。牛乳や乳製品はトリプトファンを含みますが、食品としての効果は限定的でした[4]

キウイやタルトチェリーは本当に効くのか

特定の果物が睡眠に良いという研究も増えています。キウイとタルトチェリー(酸味の強いさくらんぼ)が代表例です[5][6]

希望が持てる結果ですが、期待しすぎは禁物です[5]

日本人の食事と睡眠は、どうつながっているか

日本人を対象にした大規模な研究も、食事と睡眠の関係を示しています[7][8]

欧米の「地中海食が良い」という結論をそのまま当てはめるより、日本人の食卓に即して「野菜・魚・主食(ごはん)を整え、菓子と夜食に偏らない」ことが現実的な指針になります。

この結論はどこまで信じてよいか

ここで立ち止まりが必要です。食事と睡眠の研究の多くは、観察研究か小規模な試験です[7]

それでも、繊維の多いバランスの良い食事は、睡眠以外の健康にも確実に良い投資です。副作用なく試せる点が、食事改善の強みです。

眠りを助ける食べ方

この記事のまとめ

  • 食事の中身は眠りの深さと夜中の目覚めに影響する。食物繊維が多いと深い眠りが増え、飽和脂肪・糖が多いと浅くなる(St-Onge et al., 2016)
  • 就寝4時間前の高GI食は寝つきを早めたが、12人の小規模試験で条件依存。直前の食事はむしろ寝つきを妨げる
  • トリプトファンは1g以上の『サプリメント』で効果。食品(牛乳など)の効果は限定的(Sutanto 2022/Komada 2020)
  • キウイ・タルトチェリーは小規模試験で改善報告あり。ただし補助で、睡眠薬の代わりにはならない
  • 日本人研究でも、野菜・魚・米が少なく菓子・麺が多い食事は睡眠の質の低さと関連(Katagiri 2014/Yoneyama 2014)。ただし相関で因果ではない

参考文献と反証

各論文の「主な結果」とあわせて、相反する結果や限界(反証)も併記しています。 集団タグは研究対象(日本人/欧米など)を示します。

  1. [1]St-Onge MP, Roberts A, Shechter A, Choudhury AR (2016). Fiber and saturated fat are associated with sleep arousals and slow wave sleep. Journal of Clinical Sleep Medicine.欧米対象 ランダム化クロスオーバー試験 / 正常体重の成人26人

    結果食物繊維が多い食事ほど深い眠り(徐波睡眠)が増え、飽和脂肪の割合が高いほど深い眠りは減り、糖質の摂取が多いほど夜中の目覚めが増えた。

    反証26人・各条件5泊の小規模で短期の研究。栄養素と睡眠指標の関連であり、食事を変えれば睡眠が改善するという因果までは示していない。

    doi:10.5664/jcsm.5384
  2. [2]Afaghi A, O'Connor HT, Chow CM (2007). High-glycemic-index carbohydrate meals shorten sleep onset. The American Journal of Clinical Nutrition.欧米対象 介入試験 / 健康な男性12人

    結果就寝4時間前に高GI(血糖を上げやすい)の食事をとると、寝つくまでの時間が17.5分から9.0分へ短縮した。

    反証12人の若い男性のみの小規模な急性試験。就寝直前(1時間前)では効果がなく、「4時間前」という条件に強く依存する。

    doi:10.1093/ajcn/85.2.426
  3. [3]Sutanto CN, Loh WW, Kim JE (2022). The impact of tryptophan supplementation on sleep quality: a systematic review, meta-analysis, and meta-regression. Nutrition Reviews.総説・メタ解析 システマティックレビュー・メタ解析 / 4試験を統合

    結果トリプトファンを1g以上補給すると、夜中に目覚めている時間が短縮した。

    反証評価したのは食品ではなく精製されたサプリメントで、組み入れ試験も4件と少ない。普通の食事でこの量を摂れることを意味しない。

    doi:10.1093/nutrit/nuab027
  4. [4]Komada Y, Okajima I, Kuwata T (2020). The effects of milk and dairy products on sleep: a systematic review. International Journal of Environmental Research and Public Health.総説・メタ解析 システマティックレビュー / 14研究(うちRCT 8件)

    結果牛乳・乳製品はトリプトファンを含み、睡眠の質改善に役立つ可能性があるが、効果は限定的で結果は一貫しない。

    反証質の高い試験は3件のみで研究間のばらつきが大きい。著者は「乳製品摂取はむしろ健康的な生活習慣の指標」と慎重に結論している。

    doi:10.3390/ijerph17249440
  5. [5]Lin HH, Tsai PS, Fang SC, Liu JF (2011). Effect of kiwifruit consumption on sleep quality in adults with sleep problems. Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition.東アジア対象 自己対照試験 / 睡眠に問題のある台湾の成人24人

    結果就寝1時間前にキウイ2個を4週間食べると、睡眠の質の得点・寝つき・中途覚醒が改善し、総睡眠時間が13.4%増えた。

    反証対照群もプラセボもない24人の小規模試験で、思い込み(プラセボ効果)や時間経過の影響を排除できない。エビデンスの強さは低い。

    原典を読む
  6. [6]Howatson G, Bell PG, Tallent J, Middleton B, McHugh MP, Ellis J (2012). Effect of tart cherry juice (Prunus cerasus) on melatonin levels and enhanced sleep quality. European Journal of Nutrition.欧米対象 ランダム化二重盲検クロスオーバー試験 / 健康な成人20人

    結果メラトニンを含むタルトチェリーの濃縮ジュースを7日間飲むと、尿中のメラトニン代謝物が増え、総睡眠時間と睡眠効率が向上した。

    反証健康な20人・7日間の短期試験で、不眠症の患者を対象にしたものではない。長期の効果は不明。

    doi:10.1007/s00394-011-0263-7
  7. [7]Katagiri R, Asakura K, Kobayashi S, Suga H, Sasaki S (2014). Low intake of vegetables, high intake of confectionary, and unhealthy eating habits are associated with poor sleep quality among middle-aged female Japanese workers. Journal of Occupational Health.日本人対象 横断研究 / 日本人女性労働者3,129人(34〜65歳)

    結果野菜や魚の摂取が少なく、菓子類が多く、朝食欠食など不規則な食習慣を持つ人ほど睡眠の質が悪かった。

    反証横断研究で因果は不明。眠れないことが食習慣を乱した逆の可能性もあり、対象は中年女性に限られる。

    doi:10.1539/joh.14-0051-OA
  8. [8]Yoneyama S, Sakurai M, Nakamura K, et al. (2014). Associations between rice, noodle, and bread intake and sleep quality in Japanese men and women. PLoS One.日本人対象 横断研究 / 日本人労働者1,848人

    結果米の摂取が多い人ほど睡眠の質が悪い割合が54%低く、麺類が多い人は睡眠不良が1.82倍だった。パンは関連しなかった。

    反証横断研究で因果は示せず、単一地域の労働者が対象。食品とGIなど他の要因が交絡している可能性がある。

    doi:10.1371/journal.pone.0105198

よくある質問

何を食べると睡眠の質が上がりますか?

食物繊維の多い食事(野菜・果物・全粒穀物・豆)は深い眠りと関連します。逆に飽和脂肪や糖質の多い食事は、眠りを浅くし夜中の目覚めを増やしました。特定の一品より、食事全体の質を整えることが大切です。

寝る前にキウイや牛乳を食べると眠れますか?

一部の小規模な研究では、キウイやタルトチェリー、牛乳が睡眠指標を改善したと報告されています。ただし対照のない試験や効果の小さいものが多く、「食べれば必ず眠れる」とは言えません。あくまで補助と考えてください。

糖質を抜いたほうがよく眠れますか?

一概には言えません。就寝4時間前の高GI食は寝つきを早めたという報告がある一方、糖質の多い食事は夜中の目覚めを増やすという報告もあります。量・タイミング・食事全体のバランスで変わるため、極端な糖質制限より野菜や繊維を増やすほうが現実的です。

日本人の食事と睡眠に関係はありますか?

あります。日本人女性3,129人の研究では、野菜・魚が少なく菓子が多い食事ほど睡眠の質が低い傾向でした。別の日本人研究では、米をよく食べる人ほど睡眠が良く、麺類が多い人は睡眠が悪い傾向がありました。いずれも関連で、因果ではありません。

この記事について

文:眠りの科学 編集部

本記事は上記8本の文献に基づきます。新しい研究や反証が出た場合は更新日を改めて反映します。 内容は一般的な情報提供であり、症状がある場合は医療機関にご相談ください。