睡眠のしくみ
数日の寝不足で、血糖値を処理する力が3割落ちる
睡眠を4時間に削るとわずか6日で、血糖値を下げる体の力が30〜40%も低下することが実験で示されています。日本人は欧米人より少ないインスリンしか出せない体質で、睡眠不足の血糖ダメージを受けやすい。論文と反証から解説します。
平日の寝不足を週末に取り返す「寝だめ」。実験では、週末に好きなだけ眠っても、平日に戻ると血糖や代謝の乱れは元に戻りませんでした。一方で死亡リスクは下がるという研究もあり、評価は割れています。日本人データも含めて検証します。
平日の寝不足を週末に取り返す「寝だめ」は、半分しか効きません。実験では、週末に好きなだけ眠っても、平日に戻ると血糖や代謝の乱れは元に戻りませんでした[1]。眠気は和らいでも、体の中の乱れは残るのです。
ただしこのテーマは、研究によって結論が割れています。順番に見ていきましょう。
コロラド大学のDepnerらは、「平日に寝不足→週末に自由に睡眠→また平日に寝不足」という生活を実験室で再現しました[1]。
週末に眠ると眠気は回復します。しかし血糖や体重といった「体の中の指標」は、平日に戻ると再び崩れてしまうのです。
一方で、逆の結論を出した研究もあります。スウェーデンの約4万人を13年追跡した研究では、平日が短時間睡眠でも、週末に長く眠る人は死亡リスクが上がりませんでした[2]。
つまり「寝だめは完全な解決ではないが、まったく無意味でもない」というのが、いまの正直な答えです。
日本人にとってこの問題は切実です。国立精神・神経医療研究センターの研究では、日本人を自由に眠らせると習慣より約1時間長く眠り、自覚のない睡眠負債を抱えていました[3]。
借金にたとえれば、平日の負債が大きすぎて、週末の返済が追いつかないのです。
各論文の「主な結果」とあわせて、相反する結果や限界(反証)も併記しています。 集団タグは研究対象(日本人/欧米など)を示します。
結果週末に好きなだけ眠っても、平日の寝不足に戻ると体内時計が遅れ、夕食後の食べ過ぎ・体重増加・インスリンの効きの低下が元に戻らなかった。寝だめは代謝の乱れを防げない。
反証短期間の実験室研究で、実生活より極端な条件。長期的な健康影響を直接見たわけではない。
doi:10.1016/j.cub.2019.01.069 ↗結果平日が短時間睡眠でも、週末に長く眠る人は死亡リスクが上がらなかった。週末の睡眠が平日の不足をある程度補う可能性を示した。
反証観察研究で因果は示せない。睡眠は自己申告で、健康な人ほど週末に眠れるという逆の関係もありうる。
doi:10.1111/jsr.12712 ↗結果日本人を自由に眠らせると習慣より約1時間長く眠り、自覚なく睡眠負債を抱えていた。1時間の負債の回復に4日かかった。
反証少人数の実験室研究で、長く眠れたのは一時的な寝不足の解消という見方もできる。
doi:10.1038/srep35812 ↗週末の寝だめで平日の寝不足は取り返せますか?
完全には取り返せません。実験では、週末に好きなだけ眠っても、平日に戻ると血糖や代謝の乱れは元に戻りませんでした。眠気は和らぎますが、体の中の乱れは残ります。
では週末に長く寝るのは無意味ですか?
無意味ではありません。週末に眠る人は死亡リスクが上がらなかったという大規模研究もあります。眠気の回復や一部のリスク低下には役立ちます。ただし「平日は削っても週末で帳消し」とは考えないことです。
寝だめより良い方法はありますか?
平日の就寝を少し早めて、毎日の睡眠を底上げするのが最も確実です。週末の寝坊は2時間以内にとどめ、起床時刻を平日と大きくずらさない(社会的時差ぼけを防ぐ)のがコツです。