週末のカレンダーとまどろみを表すzのイラスト
MYTH OR FACT

週末の寝だめでは、平日の睡眠負債は返しきれない

平日の寝不足を週末に取り返す「寝だめ」。実験では、週末に好きなだけ眠っても、平日に戻ると血糖や代謝の乱れは元に戻りませんでした。一方で死亡リスクは下がるという研究もあり、評価は割れています。日本人データも含めて検証します。

ILLUSTRATION / SUIMIN LAB

平日の寝不足を週末に取り返す「寝だめ」は、半分しか効きません。実験では、週末に好きなだけ眠っても、平日に戻ると血糖や代謝の乱れは元に戻りませんでした[1]。眠気は和らいでも、体の中の乱れは残るのです。

ただしこのテーマは、研究によって結論が割れています。順番に見ていきましょう。

寝だめは代謝の乱れを防げるのか

コロラド大学のDepnerらは、「平日に寝不足→週末に自由に睡眠→また平日に寝不足」という生活を実験室で再現しました[1]

週末に眠ると眠気は回復します。しかし血糖や体重といった「体の中の指標」は、平日に戻ると再び崩れてしまうのです。

反証:寝だめが効くという研究もある

一方で、逆の結論を出した研究もあります。スウェーデンの約4万人を13年追跡した研究では、平日が短時間睡眠でも、週末に長く眠る人は死亡リスクが上がりませんでした[2]

つまり「寝だめは完全な解決ではないが、まったく無意味でもない」というのが、いまの正直な答えです。

日本人の睡眠負債は深い

日本人にとってこの問題は切実です。国立精神・神経医療研究センターの研究では、日本人を自由に眠らせると習慣より約1時間長く眠り、自覚のない睡眠負債を抱えていました[3]

借金にたとえれば、平日の負債が大きすぎて、週末の返済が追いつかないのです。

正しい寝だめの作法

この記事のまとめ

  • 週末の寝だめでは、平日に積もった代謝の乱れは元に戻らなかった(実験)
  • 一方で週末に眠る人は死亡リスクが上がらない研究もあり、評価は割れている
  • 眠気の回復には役立つが、『平日を削って週末で帳消し』は成り立たない
  • 日本人は1時間の睡眠負債の回復に4日かかり、週末だけでは返しきれない
  • 平日の就寝を早め、週末の寝坊は2時間以内に

参考文献と反証

各論文の「主な結果」とあわせて、相反する結果や限界(反証)も併記しています。 集団タグは研究対象(日本人/欧米など)を示します。

  1. [1]Depner CM, et al. (2019). Ad libitum Weekend Recovery Sleep Fails to Prevent Metabolic Dysregulation during a Repeating Pattern of Insufficient Sleep and Weekend Recovery Sleep. Current Biology.欧米対象 実験室研究 / 平日寝不足+週末自由睡眠を再現

    結果週末に好きなだけ眠っても、平日の寝不足に戻ると体内時計が遅れ、夕食後の食べ過ぎ・体重増加・インスリンの効きの低下が元に戻らなかった。寝だめは代謝の乱れを防げない。

    反証短期間の実験室研究で、実生活より極端な条件。長期的な健康影響を直接見たわけではない。

    doi:10.1016/j.cub.2019.01.069
  2. [2]Åkerstedt T, Ghilotti F, Grotta A, et al. (2019). Sleep duration and mortality – Does weekend sleep matter?. Journal of Sleep Research.欧米対象 大規模コホート / スウェーデン約4万人・13年追跡

    結果平日が短時間睡眠でも、週末に長く眠る人は死亡リスクが上がらなかった。週末の睡眠が平日の不足をある程度補う可能性を示した。

    反証観察研究で因果は示せない。睡眠は自己申告で、健康な人ほど週末に眠れるという逆の関係もありうる。

    doi:10.1111/jsr.12712
  3. [3]Kitamura S, Katayose Y, Nakazaki K, et al. (2016). Estimating individual optimal sleep duration and potential sleep debt. Scientific Reports.日本人対象 実験室研究 / 日本人成人を対象

    結果日本人を自由に眠らせると習慣より約1時間長く眠り、自覚なく睡眠負債を抱えていた。1時間の負債の回復に4日かかった。

    反証少人数の実験室研究で、長く眠れたのは一時的な寝不足の解消という見方もできる。

    doi:10.1038/srep35812

よくある質問

週末の寝だめで平日の寝不足は取り返せますか?

完全には取り返せません。実験では、週末に好きなだけ眠っても、平日に戻ると血糖や代謝の乱れは元に戻りませんでした。眠気は和らぎますが、体の中の乱れは残ります。

では週末に長く寝るのは無意味ですか?

無意味ではありません。週末に眠る人は死亡リスクが上がらなかったという大規模研究もあります。眠気の回復や一部のリスク低下には役立ちます。ただし「平日は削っても週末で帳消し」とは考えないことです。

寝だめより良い方法はありますか?

平日の就寝を少し早めて、毎日の睡眠を底上げするのが最も確実です。週末の寝坊は2時間以内にとどめ、起床時刻を平日と大きくずらさない(社会的時差ぼけを防ぐ)のがコツです。

この記事について

文:眠りの科学 編集部

本記事は上記3本の文献に基づきます。新しい研究や反証が出た場合は更新日を改めて反映します。 内容は一般的な情報提供であり、症状がある場合は医療機関にご相談ください。