夜明け前に目覚める高齢者と、浅くなる睡眠の波のイラスト
THE SCIENCE

60歳の3人に1人が夜眠れない。その正体は“深い眠り”の減少だった

年をとって眠りが浅くなり早朝に目覚めるのは、病気でも気力の衰えでもありません。深い眠り(徐波睡眠)が加齢とともに自然に減るためです。日本では60歳以上の約3割が不眠を訴えます。加齢で睡眠がどう変わるのかを、メタ分析と日本の疫学研究から解説します。

ILLUSTRATION / SUIMIN LAB

年をとって眠りが浅くなり、早朝に目が覚めるのは、病気でも気力の衰えでもありません。深い眠り(徐波睡眠)が加齢とともに自然に減るためです[1]。日本では60歳以上の約3割が不眠を訴えています[2]

「昔のようにぐっすり眠れない」のは、年齢相応の体の変化です。

加齢で睡眠はどう変わるのか

睡眠がどう変化するかを、生涯にわたって示したのがOhayonらのメタ分析です。5歳から102歳まで3,577人分のデータをまとめました[1]

深い眠りが減ると、ちょっとした物音でも目が覚めやすくなります。眠りが浅くなるのは、脳が壊れたからではありません。

なぜ朝早く目が覚めるのか

加齢では、眠りの深さだけでなくタイミングも変わります。体内時計が前にずれ、早寝早起きの方向に傾くのです。

このため、夜は早く眠くなり、朝は早く目が覚めます。早朝覚醒は、体内時計の前進という自然な変化の表れです。

高齢者の不眠は日本でどれくらい多いのか

日本人を対象に不眠の広がりを調べたのが、Kimらの疫学研究です。一般人口3,030人を調査しました[2]

不眠を訴える高齢者が多いのは、加齢による睡眠の変化が背景にあります。

この話の限界

ただし、すべてを加齢で片づけてはいけません。反証も見ておきます。

加齢による自然な変化と、治療すべき不眠は分けて考える必要があります。

年齢に合った眠り方

この記事のまとめ

  • 加齢で深い眠り(徐波睡眠)が減り、眠りが浅く・睡眠効率が下がる
  • 体内時計が前にずれ、早寝早起き・早朝覚醒が増えるのは正常な変化
  • 日本では60歳以上の29.5%が不眠を訴える
  • ただし痛み・夜間頻尿・うつなど治療できる原因が隠れることもある
  • ベッドで粘りすぎず、つらい不眠はCBT-Iなどで対処する

参考文献と反証

各論文の「主な結果」とあわせて、相反する結果や限界(反証)も併記しています。 集団タグは研究対象(日本人/欧米など)を示します。

  1. [1]Ohayon MM, Carskadon MA, Guilleminault C, Vitiello MV (2004). Meta-analysis of quantitative sleep parameters from childhood to old age in healthy individuals: developing normative sleep values across the human lifespan. Sleep.総説・メタ解析 メタ分析 / 65研究・5〜102歳の3,577人

    結果健康な人でも、深い眠り(徐波睡眠)は加齢とともに減る。総睡眠時間と睡眠効率も低下し、60歳以降は睡眠効率の低下が続く。これは病気ではなく加齢による正常な変化。

    反証対象は健康な人で、病気や薬の影響は除いている。実際の高齢者の不眠には、痛み・夜間頻尿・うつなど別の要因が重なることが多い。

    doi:10.1093/sleep/27.7.1255
  2. [2]Kim K, Uchiyama M, Okawa M, Liu X, Ogihara R (2000). An epidemiological study of insomnia among the Japanese general population. Sleep.日本人対象 疫学調査 / 日本人一般人口3,030人

    結果日本人で不眠の訴えは全体で21.4%。60歳以上では29.5%と高く、加齢とともに「眠りを保てない」「早く目が覚める」型の不眠が増えた。

    反証自己申告の調査で、客観的な睡眠は測っていない。高齢者の不眠の訴えには、生活環境や持病など多様な背景が含まれる。

    原典を読む

よくある質問

歳をとると早く目が覚めるのはなぜですか?

深い眠りが加齢とともに減り、眠りが浅くなるためです。さらに体内時計が前にずれ、早寝早起きの傾向が強まります。早朝に目が覚めるのは脳の老化や病気ではなく、加齢による正常な変化です。

高齢になると睡眠時間は短くて済みますか?

必要な睡眠時間が大きく減るわけではありません。ただし深い眠りや睡眠効率が下がるため、ベッドにいても実際に眠れる時間が減ります。日中の昼寝で補うのは自然な対応です。

高齢者の不眠は日本でどれくらい多いですか?

多くみられます。日本人一般人口の調査では、60歳以上の29.5%が不眠を訴えました。とくに途中で目が覚める、朝早く目覚めるといった型が加齢とともに増えます。

この記事について

文:眠りの科学 編集部

本記事は上記2本の文献に基づきます。新しい研究や反証が出た場合は更新日を改めて反映します。 内容は一般的な情報提供であり、症状がある場合は医療機関にご相談ください。