睡眠の不調
不眠症にいちばん効くのは、睡眠薬ではなかった
慢性的な不眠症の第一選択は、いまや睡眠薬ではなく「眠りの考え方と習慣を変える治療(CBT-I)」です。薬と違って効果が長続きし、依存もありません。日本人の不眠は男性12%・女性15%。それでも日本は薬や寝酒に頼りがちです。論文と反証から解説します。
眠れない夜は、無関係な言葉やイメージを次々に思い浮かべる「シャッフル睡眠法」で寝つきが速くなります。これは眠りに落ちる直前の脳の自然な状態をまねる方法で、悩みごとの反すうを止めて入眠を助けます。論文と反証から、やり方と限界を解説します。
眠れない夜は、頭の中で無関係な言葉やイメージを次々に思い浮かべる「シャッフル睡眠法」で、寝つきが速くなります。これは眠りに落ちる直前の脳の自然な状態をまねる方法で、悩みごとの反すうを止めて入眠を助けます[2]。寝る前に具体的なイメージへ没頭すると寝つきが速くなることは、不眠の人を対象にした実験でも確かめられています[1]。
「早く眠らなきゃ」と考えるほど、目は冴えてしまいます。シャッフル睡眠法は、その逆を行く方法です。
シャッフル睡眠法とは、互いに関係のない言葉やイメージを次々に思い浮かべ、意図的に思考をバラバラにする入眠法です。認知科学者ルーク・ボードワンが「認知シャッフル(cognitive shuffle)」「連続多様イメージング(SDIT)」として提案しました[2]。
ポイントは、思い浮かべる物どうしに意味のつながりを作らないことです。「りんご→海→鉛筆→船」のように、文脈のないバラバラの映像を一つずつ眺めていきます。
人が眠りに落ちる直前、脳は勝手に脈絡のない断片的なイメージを浮かべ始めます。これは入眠期に自然に起きる現象です。一方で、悩みごとや明日の段取りを言葉で考え続けると、脳は目標に向かう「起きているモード」のままになり、眠りが遠のきます。
シャッフル睡眠法は、この自然な入眠時の心の状態を意図的につくり出します。無関係なイメージで作業記憶(ワーキングメモリ)を占めてしまうため、心配ごとが入り込む隙がなくなるのです。
ただし、漠然と気をそらすだけでは足りません。鍵は「具体的なイメージに没頭する」ことです。不眠の人を3群に分けたHarvey & Payneの実験が、それをはっきり示しています[1]。
つまり、頭の中を空っぽにしようとするより、脳が本気で取り組める具体的な映像を与えるほうが、寝つきは良くなります。シャッフル睡眠法が「映像で思い浮かべる」ことにこだわるのは、このためです。
コツは、映像どうしをストーリーにしないことと、考え込まないことです。1枚の映像を数秒眺めたら、すぐ次へ。眠ってしまえば、それで成功です。
寝つきの悪さは、日本では珍しくない悩みです[3]。
薬の前に試せる方法を一つ持っておくと、眠れない夜の安心材料になります。
期待しすぎないために、反証も見ておきます。
それでも、副作用がなく無料で、今夜すぐ試せる点は大きな利点です。合わなければやめればよいだけです。
各論文の「主な結果」とあわせて、相反する結果や限界(反証)も併記しています。 集団タグは研究対象(日本人/欧米など)を示します。
結果寝る前に「具体的で引き込まれるイメージ」に没頭する群は、指示なし群より寝つきが速く、不快で侵入的な考えも減った。漠然と気をそらす指示には効果がなかった。
反証一晩だけの実験で長期効果は不明。効いたのはイメージの「具体性」で、ただ気をそらすだけでは効果が出なかった。
doi:10.1016/s0005-7967(01)00012-2 ↗結果無関係な言葉を次々にイメージする「シャッフル法(SDIT)」は、就寝前の心の高ぶり・睡眠努力・睡眠の質の悪さを、確立した「問題解決法」と同程度に改善した。
反証学会発表が中心で査読付き本論文化は限られる。対象は主に女子大学生で、臨床的な不眠症患者での大規模検証は不足している。
結果日本人で不眠の訴えは全体で21.4%(約5人に1人)。とくに「寝つけない」型が多かった。
反証自己申告の調査で客観的な睡眠は測っていない。不眠の背景には多様な原因が含まれる。
原典を読む ↗シャッフル睡眠法とは何ですか?
シャッフル睡眠法とは、互いに無関係な言葉やイメージを次々と頭に思い浮かべ、意図的に思考をバラバラにする入眠法です。眠りに落ちる直前の脳の自然な状態をまねることで、悩みごとの反すうを止め、寝つきを助けます。
どうやってやるのですか?
感情を動かさない適当な言葉を一つ選び、その文字で始まる物を一つずつ数秒ずつ映像で思い浮かべます。例えば「れもん」なら、れ→冷蔵庫、も→桃…と進めます。映像はバラバラのまま、物語にしないのがコツです。思いつかなくなったら別の言葉に変えます。
本当に効果がありますか?
寝る前に具体的なイメージに没頭すると寝つきが速くなることは、Harvey & Payne(2002)の研究で示されています。シャッフル法そのものはまだ大規模な臨床試験が少なく、効果は予備的な段階です。重い不眠には認知行動療法を専門家のもとで受けてください。