ベッドで目を閉じ、頭の中に無関係な物(りんご・船・鉛筆)のイメージが次々に浮かぶ人のイラスト
HABITS

眠れない夜は、頭の中でバラバラの言葉を思い浮かべるほど早く眠れた(シャッフル睡眠法)

眠れない夜は、無関係な言葉やイメージを次々に思い浮かべる「シャッフル睡眠法」で寝つきが速くなります。これは眠りに落ちる直前の脳の自然な状態をまねる方法で、悩みごとの反すうを止めて入眠を助けます。論文と反証から、やり方と限界を解説します。

ILLUSTRATION / SUIMIN LAB

眠れない夜は、頭の中で無関係な言葉やイメージを次々に思い浮かべる「シャッフル睡眠法」で、寝つきが速くなります。これは眠りに落ちる直前の脳の自然な状態をまねる方法で、悩みごとの反すうを止めて入眠を助けます[2]。寝る前に具体的なイメージへ没頭すると寝つきが速くなることは、不眠の人を対象にした実験でも確かめられています[1]

「早く眠らなきゃ」と考えるほど、目は冴えてしまいます。シャッフル睡眠法は、その逆を行く方法です。

シャッフル睡眠法とは

シャッフル睡眠法とは、互いに関係のない言葉やイメージを次々に思い浮かべ、意図的に思考をバラバラにする入眠法です。認知科学者ルーク・ボードワンが「認知シャッフル(cognitive shuffle)」「連続多様イメージング(SDIT)」として提案しました[2]

ポイントは、思い浮かべる物どうしに意味のつながりを作らないことです。「りんご→海→鉛筆→船」のように、文脈のないバラバラの映像を一つずつ眺めていきます。

なぜバラバラの言葉を思い浮かべると眠れるのか

人が眠りに落ちる直前、脳は勝手に脈絡のない断片的なイメージを浮かべ始めます。これは入眠期に自然に起きる現象です。一方で、悩みごとや明日の段取りを言葉で考え続けると、脳は目標に向かう「起きているモード」のままになり、眠りが遠のきます。

シャッフル睡眠法は、この自然な入眠時の心の状態を意図的につくり出します。無関係なイメージで作業記憶(ワーキングメモリ)を占めてしまうため、心配ごとが入り込む隙がなくなるのです。

「気をそらす」だけでは効かない

ただし、漠然と気をそらすだけでは足りません。鍵は「具体的なイメージに没頭する」ことです。不眠の人を3群に分けたHarvey & Payneの実験が、それをはっきり示しています[1]

つまり、頭の中を空っぽにしようとするより、脳が本気で取り組める具体的な映像を与えるほうが、寝つきは良くなります。シャッフル睡眠法が「映像で思い浮かべる」ことにこだわるのは、このためです。

やり方(今夜から試せる手順)

  1. 感情を動かさない適当な言葉を一つ選ぶ(例:「れもん」)。悩みに関係する言葉は避ける
  2. 最初の文字で始まる物を、数秒だけ映像で思い浮かべる(れ→冷蔵庫)
  3. 次の物へ移る(れ→冷蔵庫、列車…と、同じ文字で思いつくだけ)
  4. 思いつかなくなったら次の文字へ(も→桃、毛布…)
  5. 言葉を使い切ったら、別の適当な言葉に変えて繰り返す

コツは、映像どうしをストーリーにしないことと、考え込まないことです。1枚の映像を数秒眺めたら、すぐ次へ。眠ってしまえば、それで成功です。

日本人の不眠はどれくらい多いのか

寝つきの悪さは、日本では珍しくない悩みです[3]

薬の前に試せる方法を一つ持っておくと、眠れない夜の安心材料になります。

この方法の限界

期待しすぎないために、反証も見ておきます。

それでも、副作用がなく無料で、今夜すぐ試せる点は大きな利点です。合わなければやめればよいだけです。

今夜から眠りを取り戻すために

この記事のまとめ

  • シャッフル睡眠法は、無関係な言葉やイメージを次々浮かべて思考をバラバラにする入眠法
  • 眠りに落ちる直前の脳の自然な状態をまね、悩みの反すうを止めて寝つきを助ける
  • 鍵は『具体的なイメージへの没頭』。漠然と気をそらすだけでは効かない(Harvey & Payne, 2002)
  • 大学生154人の比較で問題解決法と同程度の効果(Beaudoin et al., 2016)。ただし臨床的な検証はまだ予備段階
  • 副作用なく今夜試せる。重い不眠は専門家のもとでCBT-Iを

参考文献と反証

各論文の「主な結果」とあわせて、相反する結果や限界(反証)も併記しています。 集団タグは研究対象(日本人/欧米など)を示します。

  1. [1]Harvey AG, Payne S (2002). The management of unwanted pre-sleep thoughts in insomnia: distraction with imagery versus general distraction. Behaviour Research and Therapy.欧米対象 実験的比較 / 不眠の41人を3群に割付

    結果寝る前に「具体的で引き込まれるイメージ」に没頭する群は、指示なし群より寝つきが速く、不快で侵入的な考えも減った。漠然と気をそらす指示には効果がなかった。

    反証一晩だけの実験で長期効果は不明。効いたのはイメージの「具体性」で、ただ気をそらすだけでは効果が出なかった。

    doi:10.1016/s0005-7967(01)00012-2
  2. [2]Beaudoin LP, Digdon N, O'Neill K, Racour G (2016). Serial Diverse Imagining Task: A New Remedy for Bedtime Complaints of Worrying and Other Sleep-Disruptive Mental Activity. SLEEP(米国睡眠学会 APSS 年次学会 発表).欧米対象 ランダム化比較 / 大学生154人

    結果無関係な言葉を次々にイメージする「シャッフル法(SDIT)」は、就寝前の心の高ぶり・睡眠努力・睡眠の質の悪さを、確立した「問題解決法」と同程度に改善した。

    反証学会発表が中心で査読付き本論文化は限られる。対象は主に女子大学生で、臨床的な不眠症患者での大規模検証は不足している。

  3. [3]Kim K, Uchiyama M, Okawa M, Liu X, Ogihara R (2000). An epidemiological study of insomnia among the Japanese general population. Sleep.日本人対象 疫学調査 / 日本人一般人口3,030人

    結果日本人で不眠の訴えは全体で21.4%(約5人に1人)。とくに「寝つけない」型が多かった。

    反証自己申告の調査で客観的な睡眠は測っていない。不眠の背景には多様な原因が含まれる。

    原典を読む

よくある質問

シャッフル睡眠法とは何ですか?

シャッフル睡眠法とは、互いに無関係な言葉やイメージを次々と頭に思い浮かべ、意図的に思考をバラバラにする入眠法です。眠りに落ちる直前の脳の自然な状態をまねることで、悩みごとの反すうを止め、寝つきを助けます。

どうやってやるのですか?

感情を動かさない適当な言葉を一つ選び、その文字で始まる物を一つずつ数秒ずつ映像で思い浮かべます。例えば「れもん」なら、れ→冷蔵庫、も→桃…と進めます。映像はバラバラのまま、物語にしないのがコツです。思いつかなくなったら別の言葉に変えます。

本当に効果がありますか?

寝る前に具体的なイメージに没頭すると寝つきが速くなることは、Harvey & Payne(2002)の研究で示されています。シャッフル法そのものはまだ大規模な臨床試験が少なく、効果は予備的な段階です。重い不眠には認知行動療法を専門家のもとで受けてください。

この記事について

文:眠りの科学 編集部

本記事は上記3本の文献に基づきます。新しい研究や反証が出た場合は更新日を改めて反映します。 内容は一般的な情報提供であり、症状がある場合は医療機関にご相談ください。