カーテンから差し込む朝日と、前に進む体内時計のイラスト
THE SCIENCE

朝の光を浴びないと、体内時計は毎日後ろにずれていく

朝に強い光を浴びると体内時計が前に進み、夜の寝つきが良くなります。逆に朝の光が不足すると時計は後ろへずれ、夜型化します。日本・九州大学の実験と、光が体内時計を動かす研究から、朝の光が眠りを整える仕組みを解説します。

ILLUSTRATION / SUIMIN LAB

朝に強い光を浴びると体内時計が前に進み、夜の寝つきが良くなります。逆に朝の光が不足すると、体内時計は毎日少しずつ後ろへずれ、夜型化します[1]。日本人を薄暗い環境で過ごさせた実験でも、体内時計が実際に後ろにずれました[2]

「夜眠れない」の原因は、夜ではなく朝にあることが少なくありません。

体内時計とは

体内時計とは、約24時間周期で眠気・体温・ホルモンを上下させる、体に備わったリズムのことです。脳の視交叉上核という部分が司令塔になっています。

この時計は、実際にはきっちり24時間ではなく、放っておくと少しずつ後ろにずれます。それを毎日リセットしているのが、朝の光です。

なぜ朝の光が眠りを整えるのか

光が体内時計を動かすことを精密に示したのが、Khalsaらの研究です。健康な成人に時間帯を変えて強い光を浴びせ、時計がどう動くかを測りました[1]

朝の光は時計を前に進め、夜のメラトニン分泌を早めます。だから夜、自然に眠くなるのです。

朝の光が足りないと何が起きるのか

では、朝に光を浴びないとどうなるのか。これを日本人で確かめたのが、九州大学のOhashi・Higuchiらの実験です[2]

在宅勤務や室内中心の生活で夜型になりやすいのは、朝の光を浴びていないからです。

この話の限界

断定の前に、反証も見ておきます。

光のタイミングが体内時計を動かすという結論は、多くの研究で繰り返し確認されています。

朝の光を味方にする方法

この記事のまとめ

  • 朝の強い光は体内時計を前に進め、夜の寝つきを良くする
  • 光が時計を動かす方向は浴びる時間帯で決まる(朝は前進、夜は後退)
  • 朝の光が不足すると時計は毎日後ろにずれ、夜型化する
  • 日本人27人の実験で、薄暗い環境では体内時計が後退し、朝の光で戻った
  • 起床後すぐ屋外の光を15〜30分浴びるのが、眠りを整える最も手軽な方法

参考文献と反証

各論文の「主な結果」とあわせて、相反する結果や限界(反証)も併記しています。 集団タグは研究対象(日本人/欧米など)を示します。

  1. [1]Khalsa SBS, Jewett ME, Cajochen C, Czeisler CA (2003). A phase response curve to single bright light pulses in human subjects. The Journal of Physiology.欧米対象 介入実験 / 健康な成人21人

    結果光が体内時計を動かす方向は、浴びる時間帯で決まる。朝に強い光を浴びると時計は前に進み(早寝早起き方向)、夜に浴びると後ろにずれる(夜型方向)。

    反証実験室で人工的な強い光を用いた条件であり、日常の窓辺の明るさや短時間の曝露での効果量は別途検討が必要。

    doi:10.1113/jphysiol.2003.040477
  2. [2]Ohashi M, Eto T, Takasu T, Motomura Y, Higuchi S (2023). Relationship between Circadian Phase Delay without Morning Light and Phase Advance by Bright Light Exposure the Following Morning. Clocks & Sleep.日本人対象 介入実験 / 日本人成人27人(九州大学)

    結果日本人を薄暗い環境で1日過ごさせると、体内時計の指標(メラトニン分泌開始)が後ろにずれた。翌朝に強い光を浴びると時計は前に戻り、ずれが大きかった人ほど戻り幅も大きかった。

    反証27人と小規模で、人工的な照度条件下の実験。屋外の自然光や個人の生活でどこまで再現するかは検証が必要。

    doi:10.3390/clockssleep5040041

よくある質問

朝に光を浴びるとなぜ眠りが整うのですか?

朝の強い光は体内時計を前に進め、夜のメラトニン分泌を早めるためです。結果として夜の寝つきが良くなり、朝も起きやすくなります。光を浴びる時間帯が、時計の進む方向を決めます。

朝の光が足りないとどうなりますか?

体内時計が毎日少しずつ後ろにずれ、夜型化します。日本人を薄暗い環境で過ごさせた実験では、体内時計の指標が実際に後ろにずれました。夜眠れず朝起きられない悪循環につながります。

何分くらい朝の光を浴びればいいですか?

起床後できるだけ早く、屋外の光を15〜30分浴びるのが目安です。屋外は曇りでも室内よりはるかに明るく、体内時計を動かすのに十分な光量があります。

この記事について

文:眠りの科学 編集部

本記事は上記2本の文献に基づきます。新しい研究や反証が出た場合は更新日を改めて反映します。 内容は一般的な情報提供であり、症状がある場合は医療機関にご相談ください。