深夜の時計と、注意力が落ちてかすんだ頭を表すイラスト
THE SCIENCE

1日だけの4時間睡眠なら平気、は誤解だった。眠らず17時間の脳は酒気帯び運転と同じ

眠らずに17〜19時間起き続けた人の作業成績は、血中アルコール濃度0.05%の酩酊状態と同等まで低下しました。日本の酒気帯び基準(0.03%)を超えるレベルです。4時間睡眠は1日だけでも注意力を確実に削ります。翌日の乗り切り方まで解説します。

ILLUSTRATION / SUIMIN LAB

一晩の寝不足は、気合いでは消えません。眠らずに17〜19時間起き続けた人の作業成績は、血中アルコール濃度0.05%——日本の酒気帯び運転の基準(0.03%)を超えるレベル——の酩酊状態と同等まで低下しました[1]。そして「1日だけの4時間睡眠」も例外ではなく、注意力の低下は初日から現れます[3]

「今日だけ寝なければいい」と考えている夜ほど、翌日の自分を過大評価しています。

一晩の寝不足は、翌日の脳に何を起こすのか

真っ先に削られるのは、難しい思考力ではなく「単純な注意力」です。70の研究・147の認知テストを統合したメタ解析が、これをはっきり示しています[2]

これが寝不足の怖さです。本人は「頭は回っている」と感じていても、信号や人の飛び出しへの反応のような、一瞬の注意が抜け落ちます。

なぜ「酒気帯び運転と同じ」と言えるのか

たとえ話ではありません。同じ人に「眠らせない条件」と「飲酒した条件」の両方で同じテストを受けさせ、直接比較した実験があります[1]

朝6時に起きて深夜0時まで起きていれば、それだけで18時間です。徹夜明けの朝は、さらにその先にあります。「徹夜明けに車で帰る」は、数字の上では飲酒運転に近い行為です。

4時間睡眠を「1日だけ」ならどうなるのか

完全な徹夜でなければ大丈夫、とも言えません。睡眠時間を4時間・6時間・8時間に分けて14日間追跡した実験では、4時間睡眠の注意力低下は初日から現れました[3]

1日だけなら低下は比較的小さく、その夜にしっかり眠れば取り戻せます。問題は「1日だけのつもり」が2日、3日と続くことです。不足は借金のように積み上がり、睡眠負債になります。

日本人はどれくらい寝不足に気づけていないのか

「自分は寝不足ではない」という感覚も、当てになりません。

ふだんから不足気味の人が一晩4時間睡眠をすると、ゼロからではなくマイナスからのスタートになります。「いつもどおりの徹夜のはずが、今回はやけにきつい」と感じるのは、このためです。

この話はどこまで確実か

反証も見ておきます。

それでも方向は一貫しています。一晩の寝不足は、本人の自覚よりも確実に深く、注意力を削ります。

翌日のダメージを最小限にするには

寝不足が避けられなかった日は、翌日の設計でダメージを減らせます。

この記事のまとめ

  • 眠らず17〜19時間起きた脳の成績は、血中アルコール濃度0.05%(日本の酒気帯び基準超)と同等だった
  • 寝不足で最初に落ちるのは難しい思考力ではなく、単純な注意力
  • 4時間睡眠の注意力低下は1日目から現れ、続けると直線的に積み上がる
  • 眠気の自覚は先に頭打ちになるため、「眠くないから平気」は当てにならない
  • 寝不足の翌日は運転と重要な判断を避け、短い仮眠と早寝で返す

参考文献と反証

各論文の「主な結果」とあわせて、相反する結果や限界(反証)も併記しています。 集団タグは研究対象(日本人/欧米など)を示します。

  1. [1]Williamson AM, Feyer AM (2000). Moderate sleep deprivation produces impairments in cognitive and motor performance equivalent to legally prescribed levels of alcohol intoxication. Occupational and Environmental Medicine.欧米対象 実験 / 成人39人(輸送業30人・軍人9人)で断眠と飲酒の成績を直接比較

    結果眠らずに17〜19時間起き続けた人の作業成績は、血中アルコール濃度0.05%のときと同等かそれ以下まで低下した。反応速度は課題によって最大50%遅くなった。

    反証39人の小規模実験で、課題は実験室の単純テスト。実際の運転や仕事の成績がまったく同じに落ちるとは限らない。

    doi:10.1136/oem.57.10.649
  2. [2]Lim J, Dinges DF (2010). A meta-analysis of the impact of short-term sleep deprivation on cognitive variables. Psychological Bulletin.総説・メタ解析 メタ解析 / 70研究・147の認知テストを統合

    結果短期の断眠は認知機能を広く低下させ、もっとも大きく落ちたのは「単純な注意・覚醒度」だった。複雑な思考より、見落とし・ぼんやりというかたちで現れる。

    反証統合された研究の多くは完全断眠(徹夜)の実験で、数時間眠れた場合の影響はこれより小さい可能性がある。低下の程度には個人差も大きい。

    doi:10.1037/a0018883
  3. [3]Van Dongen HPA, Maislin G, Mullington JM, Dinges DF (2003). The cumulative cost of additional wakefulness: dose-response effects on neurobehavioral functions and sleep physiology from chronic sleep restriction and total sleep deprivation. Sleep.欧米対象 ランダム化実験 / 健康な成人48人を4h・6h・8h睡眠に14日間

    結果4時間睡眠の注意力低下は初日から現れ、日を追うごとに積み上がった。しかも本人の眠気の自覚は途中で頭打ちになり、能力の低下に気づかなくなった。

    反証実験室の管理下で、対象は若年成人。日中の活動や個人差は反映しきれない。必要睡眠時間には大きな個人差がある。

    doi:10.1093/sleep/26.2.117
  4. [4]Kitamura S, Katayose Y, Nakazaki K, et al. (2016). Estimating individual optimal sleep duration and potential sleep debt. Scientific Reports.日本人対象 実験 / 日本人健康成人15人を9日間の延長睡眠で測定

    結果日本人を自由に眠らせると、普段より平均1時間以上長く眠った=それだけ睡眠負債を抱えていた。たまった1時間の負債を解消するには、4日続けて長く眠る必要があった。

    反証対象は15人と少なく、実験室での短期測定。最適な睡眠時間には個人差が大きい。

    doi:10.1038/srep35812

よくある質問

4時間睡眠を1日だけするのは大丈夫ですか?

体が壊れることはありませんが、翌日の注意力と反応速度は確実に落ちます。実験では4時間睡眠の影響は初日から現れました。睡眠不足の翌日は、車の運転や重要な判断をできるだけ避けてください。

徹夜明けはお酒に酔った状態と同じというのは本当ですか?

実験で確認されています。眠らずに17〜19時間起き続けた人の作業成績は、血中アルコール濃度0.05%のときと同等まで低下しました。これは日本の酒気帯び運転の基準(0.03%)を超えるレベルです。

一晩の寝不足はどうやって回復すればいいですか?

翌日の夜、いつもより早く眠るのが基本です。日中は10〜20分の短い仮眠で注意力を一時的に立て直せます。一晩の不足はその週のうちに返せますが、寝不足を毎日続けると借金のように積み上がります。

寝不足でも「自分は平気」と感じるのはなぜですか?

眠気の自覚が先に頭打ちになるためです。実験では、睡眠を削られた人の成績が下がり続けているのに、本人の眠気の訴えは途中から増えませんでした。「眠くないから大丈夫」は当てになりません。

この記事について

文:眠りの科学 編集部

本記事は上記4本の文献に基づきます。新しい研究や反証が出た場合は更新日を改めて反映します。 内容は一般的な情報提供であり、症状がある場合は医療機関にご相談ください。