夜間に下がる血圧の波と、下がらないままの波を比べたイラスト
JAPAN FOCUS

夜の血圧が下がらない人ほど、心臓病で亡くなりやすかった

健康な人は眠っている間に血圧が10〜20%下がります。この夜間の低下が起きない人は、心臓病で亡くなるリスクが高いことが、日本の大迫研究で示されました。睡眠が短い・浅いと夜の血圧は下がりません。論文と反証から解説します。

ILLUSTRATION / SUIMIN LAB

健康な人は、眠っている間に血圧が10〜20%下がります。この夜間の低下が起きない人は、心臓病で亡くなるリスクが高いことが、日本の大迫研究で示されました[1]。そして睡眠が短い・浅いと、夜の血圧は下がりません[2]

夜の血圧は、眠りの質を映す鏡でもあります。

なぜ夜になると血圧は下がるのか

血圧は一日中、一定ではありません。眠って体が休息モードに入ると、自律神経の働きで血圧が10〜20%下がります。この夜間の低下を「dipping(ディッピング)」と呼びます。

健康な睡眠では、夜のあいだ血管と心臓を休ませています。問題は、この低下が起きない人です。

夜に血圧が下がらないと何が起きるのか

これを大規模に示したのが、岩手県大迫町の住民を追跡した大迫研究です。1,542人に24時間の血圧計をつけ、その後の経過を追いました[1]

夜に血圧が下がらないと、心臓と血管が休む時間を失います。

睡眠不足は夜の血圧をどう変えるのか

ここで睡眠が効いてきます。日本人の高血圧患者を追跡した自治医大のEguchiらの研究を見てみます[2]

「血圧の薬を飲んでいるのに改善しない」背景に、睡眠不足が隠れていることがあります。

この話の限界

断定の前に、反証も見ておきます。

それでも、睡眠の乱れが夜の血圧を下げにくくする方向は一致しています。

夜の血圧を守る眠り方

この記事のまとめ

  • 健康な人は睡眠中に血圧が10〜20%下がる(dipping)
  • 夜に血圧が下がらない人ほど、心臓病で亡くなるリスクが高い(大迫研究)
  • これは24時間の平均血圧とは独立した危険因子
  • 睡眠が短い・浅いと夜間の血圧低下が起きにくくなる(自治医大)
  • 睡眠時間の確保と無呼吸の対処が、夜の血圧を守る

参考文献と反証

各論文の「主な結果」とあわせて、相反する結果や限界(反証)も併記しています。 集団タグは研究対象(日本人/欧米など)を示します。

  1. [1]Ohkubo T, Imai Y, Tsuji I, et al. (1997). Relation between nocturnal decline in blood pressure and mortality. The Ohasama Study. American Journal of Hypertension.日本人対象 前向きコホート / 岩手県大迫町の住民1,542人

    結果日本人1,542人の追跡で、夜間に血圧が下がらない人(non-dipper)や逆に上がる人(riser)は、心血管死のリスクが高かった。24時間の平均血圧とは独立した危険因子だった。

    反証観察研究で因果は断定できない。夜間血圧が下がらない背景には、睡眠以外に腎臓病や自律神経の障害など多様な要因が含まれる。

    原典を読む
  2. [2]Eguchi K, Pickering TG, Schwartz JE, et al. (2008). Short sleep duration as an independent predictor of cardiovascular events in Japanese patients with hypertension. Archives of Internal Medicine.日本人対象 前向きコホート / 日本人高血圧患者1,255人を平均50か月追跡

    結果日本人の高血圧患者で、睡眠が短い(7.5時間未満)ことは心血管イベントの独立した予測因子だった。とくに夜に血圧が上がるriser型と短時間睡眠が重なると、リスクが最も高かった。

    反証対象は高血圧患者で、健康な人にそのまま当てはまるとは限らない。睡眠時間は自己申告で、他の生活習慣の影響も完全には除けない。

    doi:10.1001/archinte.168.20.2225

よくある質問

なぜ夜になると血圧は下がるのですか?

眠ると体が休息モードに入り、自律神経の働きで血圧が10〜20%下がるためです。この夜間の低下を「dipping(ディッピング)」と呼びます。健康な睡眠では、夜に血圧と心臓を休ませています。

夜に血圧が下がらないと何が問題ですか?

心臓病で亡くなるリスクが高まります。日本の大迫研究では、夜に血圧が下がらない人や逆に上がる人ほど、心血管死のリスクが高いことが示されました。血管や心臓が休めず、負担が続くためです。

睡眠と夜の血圧は関係しますか?

関係します。睡眠が短い・浅いと、夜間の血圧低下が起きにくくなります。日本人の高血圧患者では、短時間睡眠と夜に血圧が上がる体質が重なると、心血管リスクが最も高くなりました。

この記事について

文:眠りの科学 編集部

本記事は上記2本の文献に基づきます。新しい研究や反証が出た場合は更新日を改めて反映します。 内容は一般的な情報提供であり、症状がある場合は医療機関にご相談ください。