夜空と、脳から老廃物が洗い流される様子のイラスト
THE SCIENCE

一晩の徹夜で、脳に認知症のもとがたまり始める

脳は眠っている間に、認知症の原因とされる老廃物アミロイドβを洗い流します。たった一晩の徹夜でも、脳のアミロイドは増えました。日本人約1,300人の久山町研究では、睡眠が5時間未満でも10時間以上でも認知症リスクが高まりました。論文と反証から解説します。

ILLUSTRATION / SUIMIN LAB

脳は眠っている間に、認知症の原因とされる老廃物アミロイドβを洗い流します。だから睡眠を削ると、脳に「ゴミ」がたまりやすくなります。たった一晩の徹夜でも、脳のアミロイドは増えました[1]。日本人約1,300人の久山町研究でも、短い睡眠は認知症リスクの上昇と関連していました[2]

睡眠は、脳の掃除の時間でもあります。

なぜ睡眠が認知症と関わるのか

日中、脳が働くと老廃物が出ます。その代表が、アルツハイマー型認知症と関わるアミロイドβです。

睡眠中は、脳脊髄液が脳の中を循環し、この老廃物を洗い流します。睡眠を削ると排出が追いつかず、アミロイドが脳にたまりやすくなるのです。

一晩の徹夜で脳に何が起きるのか

これを人の脳で示したのが、アメリカ国立研究所のShokri-Kojoriらの研究です。健康な成人20人の脳を、徹夜の前後でPET撮影しました[1]

一晩の徹夜で増える分はわずかでも、慢性的な睡眠不足が続けば積み重なる懸念があります。

日本人ではどんな睡眠が認知症リスクを上げるのか

日本人を長期に追跡したのが、福岡県久山町の住民を調べた久山町研究です[2]

「短ければ短いほど悪い」ではなく、極端を避けることが鍵です。

この話の限界

断定の前に、反証も見ておきます。

それでも、睡眠が脳の老廃物処理に関わるという方向は一致しています。

脳を守る眠り方

この記事のまとめ

  • 脳は睡眠中に認知症の原因とされる老廃物アミロイドβを洗い流す
  • 健康な成人でも、一晩の徹夜で脳のアミロイドβが有意に増えた
  • 日本人高齢者では睡眠5時間未満でも10時間以上でも認知症リスクが高い
  • リスクは5〜7時間台を底とするU字。短すぎも長すぎも避ける
  • 寝酒を控え、中年期からの慢性的な睡眠不足を放置しない

参考文献と反証

各論文の「主な結果」とあわせて、相反する結果や限界(反証)も併記しています。 集団タグは研究対象(日本人/欧米など)を示します。

  1. [1]Shokri-Kojori E, Wang GJ, Wiers CE, et al. (2018). β-Amyloid accumulation in the human brain after one night of sleep deprivation. PNAS.欧米対象 介入実験 / 健康な成人20人をPETで撮影

    結果健康な成人で、たった一晩の徹夜の後、脳(海馬と視床)のアミロイドβが有意に増えた。睡眠がアミロイドの排出に関わることを、人の脳で示した。

    反証20人と小規模で、急性の徹夜の影響。一晩で増えた分が長期に蓄積・固定するか、認知症に直結するかはこの研究だけでは言えない。

    doi:10.1073/pnas.1721694115
  2. [2]Ohara T, Honda T, Hata J, et al. (2018). Association Between Daily Sleep Duration and Risk of Dementia and Mortality in a Japanese Community. Journal of the American Geriatrics Society.日本人対象 前向きコホート / 久山町の高齢者約1,300人を10年追跡

    結果日本人高齢者で、睡眠が5.0時間未満でも10.0時間以上でも認知症と総死亡のリスクが高かった。リスクは睡眠5〜7時間台を底とするU字を描いた。

    反証睡眠時間は自己申告で、観察研究のため因果は示せない。認知症の前段階で睡眠が変化する逆因果の可能性もある。

    doi:10.1111/jgs.15446

よくある質問

睡眠不足は認知症の原因になりますか?

関連が示されています。脳は睡眠中に認知症の原因とされる老廃物アミロイドβを洗い流します。一晩の徹夜でも脳のアミロイドは増え、日本人の研究でも短い睡眠は認知症リスクの上昇と関連していました。

脳のゴミ(アミロイド)はいつ洗い流されるのですか?

主に睡眠中です。睡眠中は脳脊髄液が脳内を循環し、日中にたまった老廃物アミロイドβを洗い流します。睡眠を削ると、この排出が追いつかず脳にたまりやすくなります。

認知症予防には何時間眠ればよいですか?

5〜7時間台が目安です。日本人高齢者約1,300人の久山町研究では、5時間未満でも10時間以上でも認知症リスクが高く、その中間が最もリスクが低いU字の関係でした。短すぎも長すぎも避けることが大切です。

この記事について

文:眠りの科学 編集部

本記事は上記2本の文献に基づきます。新しい研究や反証が出た場合は更新日を改めて反映します。 内容は一般的な情報提供であり、症状がある場合は医療機関にご相談ください。