睡眠の不調
不眠症にいちばん効くのは、睡眠薬ではなかった
慢性的な不眠症の第一選択は、いまや睡眠薬ではなく「眠りの考え方と習慣を変える治療(CBT-I)」です。薬と違って効果が長続きし、依存もありません。日本人の不眠は男性12%・女性15%。それでも日本は薬や寝酒に頼りがちです。論文と反証から解説します。
眠れない状態が続くと、うつになるリスクが約2.6倍に高まります。不眠はうつの結果であると同時に、うつを呼び込む原因でもあります。日本人高齢者3,000人の研究でも、寝つきの悪さがその後のうつと関連しました。眠れないと心が沈む仕組みを、論文と反証から解説します。
眠れない状態が続くと、うつになるリスクが約2.6倍に高まります[1]。不眠は「うつの結果」だと思われがちですが、実際にはうつに先立つ原因にもなります。日本人高齢者3,000人の研究でも、寝つきの悪さがその後のうつと関連しました[2]。
「眠れないだけ」と放置すると、心まで巻き込まれていきます。
睡眠は、感情を整理する時間です。とくにレム睡眠には、日中に受けた嫌な出来事の感情をやわらげる働きがあります。
眠れないと、この整理ができません。ネガティブな感情が処理されないまま積み重なり、気分が沈みやすくなります。眠れない夜の不安が、さらに眠りを妨げる悪循環も起きます。
長く「うつだから眠れない」と考えられてきました。しかし順番は逆のこともあります。これを示したのがBaglioniらのメタ分析です[1]。
つまり、不眠を早めに整えることは、うつの予防にもなります。
日本人を対象に、どの不眠が危ないかを調べたのが、うつのない高齢者3,065人を3年追跡した研究です[2]。
「なかなか寝つけない」が続くなら、気分の変化にも気を配る価値があります。
断定の前に、反証も見ておきます。
不眠は、心の不調の早期サインとして扱う価値があります。
各論文の「主な結果」とあわせて、相反する結果や限界(反証)も併記しています。 集団タグは研究対象(日本人/欧米など)を示します。
結果不眠のある人は、ない人に比べてその後にうつを発症するリスクが約2.6倍(オッズ比2.60)高かった。不眠はうつの結果だけでなく、うつに先立つ危険因子でもある。
反証観察研究をまとめたもので因果の証明ではない。不眠とうつには共通の原因(ストレス等)が背景にある可能性もある。
doi:10.1016/j.jad.2011.01.011 ↗結果日本人高齢者で、寝つきの悪さ(入眠困難)があった人はその後うつを発症しやすく、リスクは約1.6倍だった。中途覚醒や早朝覚醒より、寝つきの悪さがうつと強く関連した。
反証高齢者対象で自己申告に基づく。観察研究のため因果は断定できない。
doi:10.1093/sleep/33.12.1693 ↗眠れないとうつになりやすいのですか?
なりやすくなります。不眠のある人はその後うつを発症するリスクが約2.6倍高いことが、長期研究のメタ分析で示されました。不眠はうつのサインであると同時に、うつを呼び込む原因にもなります。
不眠とうつ、どちらが先ですか?
両方向の関係があります。うつで眠れなくなることもあれば、不眠が先行してうつを招くこともあります。日本人高齢者の研究では、寝つきの悪さがその後のうつ発症と関連しました。だから不眠を早めに整えることが、うつの予防にもなります。
眠れないつらさはどうすればいいですか?
まず「眠れないまま布団で粘らない」ことが基本です。15〜20分眠れなければ一度起きる方法や、睡眠の認知行動療法(CBT-I)が有効です。気分の落ち込みが2週間以上続くなら、早めに医療機関に相談してください。