眠れず横たわる人と、沈んでいく心を表したイラスト
DISORDERS

眠れない夜が続く人は、うつになるリスクが2.6倍だった

眠れない状態が続くと、うつになるリスクが約2.6倍に高まります。不眠はうつの結果であると同時に、うつを呼び込む原因でもあります。日本人高齢者3,000人の研究でも、寝つきの悪さがその後のうつと関連しました。眠れないと心が沈む仕組みを、論文と反証から解説します。

ILLUSTRATION / SUIMIN LAB

眠れない状態が続くと、うつになるリスクが約2.6倍に高まります[1]。不眠は「うつの結果」だと思われがちですが、実際にはうつに先立つ原因にもなります。日本人高齢者3,000人の研究でも、寝つきの悪さがその後のうつと関連しました[2]

「眠れないだけ」と放置すると、心まで巻き込まれていきます。

なぜ眠れないと心が沈むのか

睡眠は、感情を整理する時間です。とくにレム睡眠には、日中に受けた嫌な出来事の感情をやわらげる働きがあります。

眠れないと、この整理ができません。ネガティブな感情が処理されないまま積み重なり、気分が沈みやすくなります。眠れない夜の不安が、さらに眠りを妨げる悪循環も起きます。

不眠とうつ、どちらが先なのか

長く「うつだから眠れない」と考えられてきました。しかし順番は逆のこともあります。これを示したのがBaglioniらのメタ分析です[1]

つまり、不眠を早めに整えることは、うつの予防にもなります。

日本人ではどんな不眠が危ないのか

日本人を対象に、どの不眠が危ないかを調べたのが、うつのない高齢者3,065人を3年追跡した研究です[2]

「なかなか寝つけない」が続くなら、気分の変化にも気を配る価値があります。

この話の限界

断定の前に、反証も見ておきます。

不眠は、心の不調の早期サインとして扱う価値があります。

眠れないつらさへの対処

この記事のまとめ

  • 不眠のある人は、その後うつを発症するリスクが約2.6倍高かった
  • 不眠はうつの結果だけでなく、うつに先立つ原因にもなる
  • 睡眠は感情を整理する時間で、眠れないと気分が沈みやすい
  • 日本人高齢者では『寝つきの悪さ』がその後のうつと強く関連した
  • 不眠を早めに整えることがうつの予防になる。長引く落ち込みは受診を

参考文献と反証

各論文の「主な結果」とあわせて、相反する結果や限界(反証)も併記しています。 集団タグは研究対象(日本人/欧米など)を示します。

  1. [1]Baglioni C, Battagliese G, Feige B, et al. (2011). Insomnia as a predictor of depression: a meta-analytic evaluation of longitudinal epidemiological studies. Journal of Affective Disorders.総説・メタ解析 メタ分析 / 長期追跡の疫学研究をまとめて解析

    結果不眠のある人は、ない人に比べてその後にうつを発症するリスクが約2.6倍(オッズ比2.60)高かった。不眠はうつの結果だけでなく、うつに先立つ危険因子でもある。

    反証観察研究をまとめたもので因果の証明ではない。不眠とうつには共通の原因(ストレス等)が背景にある可能性もある。

    doi:10.1016/j.jad.2011.01.011
  2. [2]Yokoyama E, Kaneita Y, Saito Y, et al. (2010). Association between Depression and Insomnia Subtypes: A Longitudinal Study on the Elderly in Japan. Sleep.日本人対象 縦断研究 / うつのない日本人高齢者3,065人を3年追跡

    結果日本人高齢者で、寝つきの悪さ(入眠困難)があった人はその後うつを発症しやすく、リスクは約1.6倍だった。中途覚醒や早朝覚醒より、寝つきの悪さがうつと強く関連した。

    反証高齢者対象で自己申告に基づく。観察研究のため因果は断定できない。

    doi:10.1093/sleep/33.12.1693

よくある質問

眠れないとうつになりやすいのですか?

なりやすくなります。不眠のある人はその後うつを発症するリスクが約2.6倍高いことが、長期研究のメタ分析で示されました。不眠はうつのサインであると同時に、うつを呼び込む原因にもなります。

不眠とうつ、どちらが先ですか?

両方向の関係があります。うつで眠れなくなることもあれば、不眠が先行してうつを招くこともあります。日本人高齢者の研究では、寝つきの悪さがその後のうつ発症と関連しました。だから不眠を早めに整えることが、うつの予防にもなります。

眠れないつらさはどうすればいいですか?

まず「眠れないまま布団で粘らない」ことが基本です。15〜20分眠れなければ一度起きる方法や、睡眠の認知行動療法(CBT-I)が有効です。気分の落ち込みが2週間以上続くなら、早めに医療機関に相談してください。

この記事について

文:眠りの科学 編集部

本記事は上記2本の文献に基づきます。新しい研究や反証が出た場合は更新日を改めて反映します。 内容は一般的な情報提供であり、症状がある場合は医療機関にご相談ください。