夜空とウイルス、それを守る盾のイラスト
THE SCIENCE

寝不足の人は、風邪を4倍ひきやすい

睡眠が5時間未満の人は、7時間以上の人に比べて風邪を4倍以上ひきやすいことが実験で示されました。睡眠不足は、ウイルスと戦う免疫の働きを直接弱めます。日本人約10万人の研究でも、短い睡眠は感染症を含む死亡リスクの上昇と関連していました。

ILLUSTRATION / SUIMIN LAB

睡眠が5時間未満の人は、7時間以上の人に比べて風邪を4.5倍ひきやすいことが実験で示されました[1]。睡眠不足は「疲れる」だけでなく、ウイルスと戦う免疫の働きを直接弱めます。日本人約10万人の研究でも、短い睡眠は感染症を含む死亡リスクの上昇と関連していました[2]

「寝不足のときに限って風邪をひく」のは、気のせいではありません。

なぜ寝不足だと風邪をひきやすいのか

免疫細胞は、夜の睡眠中にもっとも活発に働きます。ウイルスや細菌を攻撃する細胞が動き、抗体をつくる準備が整うのも睡眠中です。

睡眠を削ると、この夜間のメンテナンスができません。ウイルスが入ってきたとき、迎え撃つ態勢が整っていないのです。

寝不足でどれくらい風邪をひきやすくなるのか

これを実験で示したのが、カリフォルニア大学のPratherらの研究です。健康な成人164人の睡眠を1週間記録した後、鼻にかぜウイルスを入れて発症するかを調べました[1]

睡眠は、最も身近で強力な「感染予防策」のひとつです。

日本人でも睡眠不足は病気のリスクを上げるのか

この傾向は日本人でも確認されています。約10万人を追跡したJACC研究を見てみます[2]

世界一眠らない国とも言われる日本では、この問題はとくに身近です。

この話の限界

断定の前に、反証も見ておきます。

それでも、睡眠不足が免疫を弱める方向は、実験と疫学の両方で一致しています。

免疫を守る眠り方

この記事のまとめ

  • 睡眠5時間未満の人は7時間以上より風邪の発症リスクが4.5倍高かった
  • 免疫細胞は夜の睡眠中に活発に働き、ウイルスへの防御を整える
  • 睡眠の短さは年齢・ストレス・喫煙よりも強く風邪の発症を予測した
  • 日本人約10万人でも、睡眠4時間以下は感染症を含む死亡が約1.5倍
  • 流行期やワクチン前後ほど、睡眠を7時間以上確保する

参考文献と反証

各論文の「主な結果」とあわせて、相反する結果や限界(反証)も併記しています。 集団タグは研究対象(日本人/欧米など)を示します。

  1. [1]Prather AA, Janicki-Deverts D, Hall MH, Cohen S (2015). Behaviorally Assessed Sleep and Susceptibility to the Common Cold. Sleep.欧米対象 介入実験 / 健康な成人164人にウイルスを点鼻

    結果鼻にかぜウイルスを入れる実験で、睡眠が5時間未満の人は7時間以上の人より発症リスクが4.5倍高かった。睡眠の短さは、年齢・ストレス・喫煙より強く発症を予測した。

    反証実験的にウイルスを投与した特殊な状況。日常のあらゆる感染にそのまま当てはまるかは別途検証が必要。

    doi:10.5665/sleep.4968
  2. [2]Ikehara S, Iso H, Date C, et al. (2009). Association of sleep duration with mortality from cardiovascular disease and other causes for Japanese men and women: the JACC study. Sleep.日本人対象 前向きコホート / 日本人98,634人を中央値14.3年追跡

    結果日本人約10万人で、睡眠4時間以下の人は心血管・がん以外の死亡(肺炎などの感染症を含む)が約1.5倍だった。睡眠時間と死亡は7時間を底とするU字を描いた。

    反証観察研究で因果は示せず、睡眠時間は自己申告。死因は感染症に限らず、短い睡眠が病気の結果である逆の可能性もある。

    doi:10.1093/sleep/32.3.295

よくある質問

寝不足だと本当に風邪をひきやすくなりますか?

ひきやすくなります。鼻にかぜウイルスを入れる実験で、睡眠5時間未満の人は7時間以上の人より発症リスクが4.5倍高くなりました。睡眠不足は、ウイルスと戦う免疫の働きを直接弱めます。

なぜ睡眠不足で免疫が落ちるのですか?

免疫細胞は夜の睡眠中に活発に働き、ウイルスや細菌への防御を整えるためです。睡眠を削ると、ウイルスを攻撃する細胞の働きや、抗体をつくる力が低下します。

何時間眠れば免疫を守れますか?

7時間以上が目安です。実験では発症リスクが上がるのは6時間未満からでした。日本人約10万人の研究でも、死亡リスクが最も低いのは7時間でした。慢性的な5時間未満を避けることが重要です。

この記事について

文:眠りの科学 編集部

本記事は上記2本の文献に基づきます。新しい研究や反証が出た場合は更新日を改めて反映します。 内容は一般的な情報提供であり、症状がある場合は医療機関にご相談ください。