睡眠の不調
不眠症にいちばん効くのは、睡眠薬ではなかった
慢性的な不眠症の第一選択は、いまや睡眠薬ではなく「眠りの考え方と習慣を変える治療(CBT-I)」です。薬と違って効果が長続きし、依存もありません。日本人の不眠は男性12%・女性15%。それでも日本は薬や寝酒に頼りがちです。論文と反証から解説します。
不眠の治療で世界・日本の指針が「最初に勧める」のは睡眠薬ではなく、認知行動療法(CBT-I)です。睡眠薬は有効ですが、高齢者では転倒や認知の低下などのリスクが利益を上回ることもあります。睡眠薬・睡眠導入剤との正しい付き合い方を、論文と指針から解説します。
不眠の治療で、世界・日本の指針が「最初に勧める」のは睡眠薬ではありません。認知行動療法(CBT-I)です[1]。睡眠薬は確かに眠りやすくしますが、とくに高齢者では転倒や日中の眠気などのリスクが利益を上回ることもあります[2]。薬は「使ってはいけないもの」ではなく、「順番と使い方を守るもの」です。
「眠れない=すぐ睡眠薬」ではない、という前提から見ていきます。
米国睡眠医学会のガイドラインは、慢性不眠の治療として認知行動療法を強く推奨しています[1]。
薬は飲んでいる間だけ効きますが、やめると元に戻りがちです。一方CBT-Iは、眠りを妨げる考え方や習慣そのものを変えるため、効果が長持ちします。
とくに高齢者では、慎重さが必要です[2]。
「睡眠導入剤」と呼ばれるものも含め、ほとんどは医師の処方が必要な薬です。市販の「睡眠改善薬」とは成分も作用も異なります。
日本にも、使い方と「やめ方」を定めた指針があります[3]。
近年は依存しにくいタイプ(メラトニン受容体に働く薬やオレキシンを抑える薬)も使われます。メラトニン系の薬もその一つです。
各論文の「主な結果」とあわせて、相反する結果や限界(反証)も併記しています。 集団タグは研究対象(日本人/欧米など)を示します。
結果慢性不眠の治療として、認知行動療法(CBT-I)を「強く推奨」した。効果はゆるやかに現れるが、治療を終えたあとも長く続く。これが第一選択であり、薬はその次に検討される。
反証CBT-Iは受けられる施設が限られ、効果が出るまで時間がかかる。すぐに眠りたい急性期には薬が必要な場面もある。
doi:10.5664/jcsm.8986 ↗結果高齢者では、睡眠薬で眠りが多少改善しても、その利益は小さく、ふらつき・転倒・日中の眠気・認知の低下といったリスクが利益を上回ることがある。安易な使用は勧められない。
反証短期使用の解析が中心で、必要な場面まで否定するものではない。適切に使えば有益なこともある。
doi:10.1136/bmj.38623.768588.47 ↗結果ベンゾジアゼピン系を第一選択から外し、多剤併用や常用量を超える使用を避けるよう求めた。やめるときは1〜2週ごとに1/4錠ずつ減らすなど、ゆっくり減薬する。急にやめると20〜40%に離脱症状が出る。
反証ガイドラインであり個々の患者への適否は主治医の判断による。自己判断での中断・増減はかえって危険。
原典を読む ↗睡眠薬と睡眠導入剤は違うものですか?
ほぼ同じ意味で使われます。「睡眠導入剤」は寝つきを良くする作用が比較的短いタイプを指すことが多いですが、明確な区別はありません。いずれも医師の処方が基本で、市販の「睡眠改善薬」とは成分が異なります。
睡眠薬を飲めば不眠は治りますか?
一時的に眠りやすくはなりますが、根本治療ではありません。世界・日本の指針が最初に勧めるのは、薬ではなく認知行動療法(CBT-I)です。薬は必要な場面で、医師の管理のもとで使うものです。
睡眠薬は自分でやめてもいいですか?
急にやめないでください。20〜40%の人に不眠の悪化などの離脱症状が出ます。やめるときは医師と相談し、1〜2週ごとに少しずつ減らします。自己判断での中断や増量は危険です。