夜の寝室で半分だけ目覚めたように起き上がる人影と、半分眠った脳を表したイラスト
DISORDERS

夜中に叫び歩く子どもは3割。夢を見ているのではなく、脳が半分だけ目覚めていた

睡眠中に歩く・叫ぶ・暴れるのは夢ではなく、脳の一部が眠ったまま体だけが動く「睡眠時随伴症」です。子どもの夜驚や夢遊の多くは成長とともに自然に治まります。一方、高齢者で夢のとおりに体が動くレム睡眠行動障害は、将来の脳の病と関わることがあり受診が必要です。症状別に見極め方をまとめます。

ILLUSTRATION / SUIMIN LAB

睡眠中に歩いたり、叫んだり、暴れたりするのは、夢を見ているからではありません。脳の一部が深く眠ったまま、体や別の脳の部分だけが動き出す「睡眠時随伴症(パラソムニア)」という現象です[1]。子どもに多い寝ぼけ・夢遊・夜驚の多くは成長とともに自然に治まります。一方、高齢者で夢のとおりに体が動くタイプは、将来の脳の病と関わることがあり、見極めが大切です[3]

睡眠時随伴症とは何か

睡眠時随伴症は、大きく2つのタイプに分かれます。ひとつは深いノンレム睡眠から中途半端に目覚めて起こる「ノンレム型」で、寝ぼけ(錯乱性覚醒)・夢遊病(睡眠時遊行症)・夜驚症がこれにあたります。もうひとつは、本来は体が動かないはずのレム睡眠で夢のとおりに動いてしまう「レム睡眠行動障害」です。

大人でも決して珍しくありません。

なぜ寝ぼけ・夢遊・夜驚が起きるのか

ノンレム型は、眠りの前半に多い深いノンレム睡眠から、脳が完全に目覚めきれずに起こります[1]。脳の一部は眠ったまま、歩く・話すといった行動だけが動き出すため、本人は翌朝ほとんど覚えていません。

睡眠不足・発熱・ストレス・不規則な生活は、深い眠りを強め、引き金になりやすいことが知られています。つまり多くの場合は「心の問題」ではなく、眠りの深さと覚醒のすれ違いという生理現象です。

子どもに多いのはなぜか、大人ではどうか

子どもは大人より深いノンレム睡眠の量が多く、そこから不完全に目覚める睡眠時随伴症が起きやすい時期があります。そして、その多くは成長とともに自然に減っていきます。

夢遊病や夜驚症は遺伝的な体質の影響も大きく、親に夢遊病の経験があると子どもの発症率は22.5%から最大61.5%まで上がります[2]。子どもの睡眠時随伴症は、しつけや育て方の問題ではありません。

夢のとおりに体が動く眠りは、将来の脳の病と関わるのか

レム睡眠行動障害は、本来は筋肉がゆるんで動かないはずのレム睡眠で、夢の内容のままに殴る・蹴る・叫ぶといった行動が出てしまう状態です。中高年、とくに男性に多いのが特徴です。これは子どものノンレム型とは別物で、注意が必要なサインになることがあります。

ただし、この数字は強い不安をあおるために使うべきではありません。

どんなときに受診すべきか

子どものノンレム型の多くは良性で、基本は環境を安全にして見守ります。ドアや窓に施錠する、階段や鋭利なものを片づける、睡眠不足を避ける、といった対策が中心です。無理に起こすと混乱が強まることがあるため、静かに見守って布団に戻すのが基本です。

次のような場合は、受診を検討してください(これは受診の目安であり、診断ではありません)。

受診先は症状によって変わります。夢のとおりに動くレム睡眠行動障害が疑われる場合は脳神経内科や睡眠外来が窓口です。どこに行くべきか迷うときは、症状別の受診先ガイドも参考にしてください。最終的な診断と治療方針は医師が決めます。

参考(公的機関・学会)

この記事のまとめ

  • 睡眠中に歩く・叫ぶ・暴れるのは夢ではなく、脳が半分眠ったまま動く睡眠時随伴症
  • 寝ぼけ・夢遊・夜驚は深いノンレム睡眠からの不完全な覚醒で、子どもに多く成長で自然に治まる
  • 幼児の夜驚はピークで約3割、夢遊病は10歳で約13%。遺伝的な体質の影響が大きい
  • 夢のとおりに激しく動くレム睡眠行動障害は中高年男性に多く、将来の脳の病と関わることがある
  • 大人になって新たに激しく動く・けがの危険がある場合は脳神経内科や睡眠外来へ。最終診断は医師が行う

参考文献と反証

各論文の「主な結果」とあわせて、相反する結果や限界(反証)も併記しています。 集団タグは研究対象(日本人/欧米など)を示します。

  1. [1]Ohayon MM, Guilleminault C, Priest RG (1999). Night terrors, sleepwalking, and confusional arousals in the general population: their frequency and relationship to other sleep and mental disorders. Journal of Clinical Psychiatry.欧米対象 電話面接による横断調査 / 英国成人4,972人

    結果英国成人では錯乱性覚醒(寝ぼけ)4.2%、夜驚症2.2%、睡眠時遊行症(夢遊病)2.0%が報告された。大人でも珍しくない。

    反証電話面接による自己申告で、睡眠検査による確定診断ではない。記憶に残りにくい症状のため、実際の頻度は前後しうる。

    doi:10.4088/jcp.v60n0413
  2. [2]Petit D, Pennestri MH, Paquet J, et al. (2015). Childhood Sleepwalking and Sleep Terrors: A Longitudinal Study of Prevalence and Familial Aggregation. JAMA Pediatrics.欧米対象 出生コホート縦断調査 / カナダ・ケベックの子ども1,940人

    結果夜驚症は1歳半で34.4%、夢遊病は10歳で13.4%とピークを迎えた。親に夢遊病歴があると子の発症は22.5%から最大61.5%に上がり、強い遺伝的な集積が見られた。

    反証親による質問紙回答に基づく推定で、症状の定義や報告のしかたで数値は変わりうる。欧米の単一コホートの結果である。

    doi:10.1001/jamapediatrics.2015.127
  3. [3]Postuma RB, Iranzo A, Hu M, et al. (2019). Risk and predictors of dementia and parkinsonism in idiopathic REM sleep behaviour disorder: a multicentre study. Brain.多国籍 多施設前向きコホート / 特発性レム睡眠行動障害1,280人

    結果特発性レム睡眠行動障害の患者は年あたり約6.3%が神経変性疾患を発症し、12年で約73.5%がパーキンソン病・レビー小体型認知症・多系統萎縮症のいずれかに移行した。

    反証対象は専門施設に紹介された「特発性」RBD患者で、一般の人より発症リスクが高い集団に偏る。寝言や子どもの夜驚など他のタイプには当てはまらない。

    doi:10.1093/brain/awz030
  4. [4]Nomura T, Inoue Y, Kagimura T, Nakashima K (2015). Validity of the Japanese version of the REM Sleep Behavior Disorder (RBD) Screening Questionnaire for detecting probable RBD in the general population. Psychiatry and Clinical Neurosciences.日本人対象 地域住民への質問紙調査+面接 / 日本(大山町)1,572人

    結果日本の一般住民1,572人のうち、レム睡眠行動障害が疑われる人は0.57%(9人)だった。質問紙で6点以上を目安にスクリーニングできる。

    反証質問紙と面接による「疑い」の推定で、睡眠検査による確定ではない。地方の一地域の調査で、年齢構成により有病率は変わりうる。

    doi:10.1111/pcn.12286

よくある質問

睡眠時随伴症とは何ですか?

睡眠中に起こる望ましくない行動や体験の総称です。寝ぼけ・夢遊病・夜驚症のように深い眠りから中途半端に覚める「ノンレム型」と、夢のとおりに体が動く「レム睡眠行動障害(レム型)」に大きく分かれます。前者は子どもに多く、後者は中高年に多いのが特徴です。

子どもの夜驚症や夢遊病は治りますか?

多くは成長とともに自然に治まります。夜驚症は1歳半ごろ、夢遊病は10歳ごろにもっとも多く、思春期までに減っていくのが一般的です。けがの危険がある環境を片づけ、睡眠不足を避けることが基本で、無理に起こす必要はありません。

寝ているときに歩いたり叫んだりするのは病気ですか?

多くは病気ではなく、深い眠りからの不完全な覚醒で起こる良性のものです。ただし頻繁でけがの危険がある、日中の強い眠気を伴う、大人になってから新たに始まった場合は、別の睡眠の病気が隠れていることがあるため受診を検討してください。

大人になってから夢のとおりに激しく体が動くのは危険ですか?

レム睡眠行動障害の可能性があります。これは将来のパーキンソン病などと関わることが報告されており、特に中高年の男性で新たに現れた場合は、脳神経内科や睡眠外来への相談をおすすめします。自己診断ではなく、医師の評価が必要です。

この記事について

文:眠りの科学 編集部

本記事は上記4本の文献に基づきます。新しい研究や反証が出た場合は更新日を改めて反映します。 内容は一般的な情報提供であり、症状がある場合は医療機関にご相談ください。