睡眠時間の分布を表す釣鐘型のグラフと、平均から左右に広がる個人差の幅を示したイラスト
JAPAN FOCUS

必要な睡眠時間は同じ年齢でも2時間ちがう。平均7時間を目標にしてはいけない理由

日本人の睡眠時間のばらつきは標準偏差でおよそ1時間です。日本人6,908人を7日間実測すると6.01±0.96時間。20代男性15人に眠れるだけ眠らせた実験でも、必要量は7.3〜9.3時間に散らばりました。平均値はあなたの目標ではありません。

ILLUSTRATION / SUIMIN LAB

必要な睡眠時間の個人差は、標準偏差にしておよそ1時間あります。日本人6,908人の手首にアクチグラフを7日間つけて実測した長浜スタディでは、睡眠時間は6.01±0.96時間でした[1]。平均±1時間の中に入るのは約3分の2の人だけで、残りの3分の1はその外側にいます。

だから「平均7時間」は、あなたが目指すべき数字ではありません。それは集団を代表する数字であって、個人の処方箋ではないからです。

日本人の睡眠時間はどれくらいばらついているのか

日本人の睡眠時間の標準偏差は、測り方を変えても約1時間に収束します。これが今回もっとも確かな事実です。

標準偏差が1時間であることの意味は、こう読み替えられます。平均±1時間(この集団ならおよそ5〜7時間)に約68%、平均±2時間(およそ4〜8時間)に約95%の人が入ります。

つまり「7時間眠れていない自分は異常なのか」という問いには、統計的にはっきり答えられます。異常ではありません。5時間台も8時間台も、ごく普通に存在する幅の中です。

なぜ「日本人の平均睡眠時間」は資料によって違うのか

ばらつきは頑健なのに、平均値のほうは測り方で1時間以上動きます。ここが混乱のもとです。

同じ日本人を対象にしても、アクチグラフによる実測は約6.0時間[1]、厚生労働省の国民健康・栄養調査のような選択式の自己申告では6時間台が最も多く、生活時間を15分単位で記録する調査では7時間台後半が出ます。同じ人の客観測定と自己申告ですら0.5時間ずれています[1]

理由は単純で、それぞれ測っているものが違うからです。アクチグラフは実際に眠っていた時間、生活時間の記録は床にいた時間、選択式の自己申告は本人の記憶と印象です。

平均値の水準は脆く、ばらつきの大きさは頑健です。だから「日本人の平均は何時間か」を追いかけるより、「自分はどのあたりにいるか」を考えるほうが実りがあります。

同じ年齢・同じ性別でも必要な睡眠時間は違うのか

違います。しかも、条件をそろえてなお2時間ちがいます。

国立精神・神経医療研究センターのKitamuraらは、健康な日本人男性15人を実験室に14日間滞在させ、そのうち9日間は「12時間ベッドにいてよい」条件で眠らせました[4]。眠れるだけ眠らせると睡眠時間は日ごとに減っていき、やがて頭打ちになります。この頭打ちの値を各自について求めたものが、その人の最適睡眠時間です。

年齢も性別も健康状態もそろえた15人で、なお約2時間の開きが出ました。年齢も性別もばらばらな一般の集団なら、幅はこれより広いと考えるべきです。

同じ手法は欧米でも試されています。18〜32歳の17人を1日16時間の就床機会に置いた研究では、習慣的な睡眠時間が6.1〜10.3時間に散らばりました[5]

なお、Kitamuraらの論文が数値に添えている「±0.18時間」は標準偏差ではなく標準誤差です。ばらつきの大きさとして読むと約11分となり、実際の個人差を5分の1に見誤ります。個人差を語るときは、標準偏差か実測の範囲を見てください。

睡眠時間の個人差はどこから来るのか

半分弱が遺伝、残りがその人固有の環境です。

双生児45,328人を集めたメタ解析では、睡眠時間のばらつきの46%が遺伝で説明されました[6]。家庭という共有環境が効くのは小児期だけで、大人になってからのばらつきは、遺伝とその人だけが経験する環境で決まります。

ところが遺伝子を直接調べると、話が合いません。欧州系44万人超のゲノム解析では、睡眠時間に関わる遺伝子座が78か所見つかりましたが、その78か所が説明できるばらつきはわずか0.69%でした[9]。一般的な遺伝的変異をすべて合わせても9.8%です。

双生児研究の約46%と、遺伝子解析の約10%。この差は「失われた遺伝率」と呼ばれ、まだ埋まっていません。実務的な意味はこうです。遺伝子検査で自分の必要睡眠時間を知ることは、現時点ではできません。

日本人の睡眠時間を左右していた遺伝子とは

日本人で唯一見つかったのは、お酒の強さを決める遺伝子でした。

欧米の遺伝子研究の結論を、そのまま日本人に当てはめることはできません。同時にこの結果は、日常的な示唆も含んでいます。あなたの睡眠時間に効いている「体質」の正体が、実はお酒との付き合い方だった、という可能性です。アルコールと睡眠の関係は、遺伝の話としても無視できません。

年齢が上がると必要な睡眠時間は減るのか

実際に眠る時間は確実に減ります。ただし「必要量が減った」のかどうかは、まだ決着していません。

脳波で測った健常者5,273人のメタ解析では、総睡眠時間は10歳ごとに10.1分(95%CI 7.5〜12.8)短くなりました[13]。中途覚醒は10歳ごとに9.7分増えます。一方で深い眠りとレム睡眠の「割合」は加齢で有意に変わりませんでした。

問題は解釈です。

実用上の結論は明快です。**年をとって眠りが浅くなったことを、健康な変化だと決めつけないでください。**日中に強い眠気が残るなら、それは加齢のせいではなく対処すべき問題です。

同じ時間しか眠れなくても影響は同じなのか

同じではありません。個人差は「必要な睡眠時間」だけでなく、「足りなかったときの壊れ方」にもあります。

健康な成人21人に36時間の完全断眠を3回反復させた研究では、成績の落ち方が人によって大きく違いました[11]。しかも同じ人は何度やっても同じように落ちます。

つまり「あの人は5時間で平気だから自分も」という比較は、二重に成り立ちません。必要な睡眠時間が違ううえに、足りないときの影響の出方まで違うからです。4時間で足りる体質は実在しますが、それはごく一部の人に限られます。

どうすれば自分の幅を知ることができるのか

自分の必要量は、実験室でなくても近い方法で測れます。

  1. 目覚まし時計を使わずに眠れる日を4日以上続ける。連休や長期休暇が向いています
  2. 就床時刻と起床時刻を記録する。最初の1〜2日は溜まっていた睡眠負債を返すために長く眠るので、判断材料にしません
  3. 睡眠時間が頭打ちになった値を読む。Kitamuraらの実験でも、睡眠時間は4日目までにほぼ飽和しました[4]
  4. 日中の眠気で答え合わせをする。眠気が出ないなら足りています

そのうえで、目安となる「幅」も知っておいてください。米国睡眠財団は26〜64歳の推奨を7〜9時間としつつ、6時間や10時間も「人によっては適切な場合がある」と明記しています[12]。65歳以上では推奨7〜8時間で、5〜6時間や9時間が許容範囲に入ります。推奨レンジそのものが、幅を持って設計されているのです。

数字を目標にするのではなく、自分の値を測って、それが許容される幅の中にあるかを確認する。これが個人差1時間という現実に対する、正しい向き合い方です。日本人にとっての最適な睡眠時間も、死亡率が最も低い7時間という数字も、あくまで集団の代表値として読んでください。

まとめ

この記事のまとめ

  • 日本人の睡眠時間の標準偏差は約1時間。平均±1時間に約3分の2、±2時間に約95%が入る
  • このばらつきは測定法や集団を変えても約1時間で頑健。一方で平均値そのものは測り方で1時間以上動く
  • 20〜26歳の健康な男性15人という均質な集団でさえ、必要な睡眠時間は7.29〜9.26時間と約2時間ばらついた
  • 個人差の46%は遺伝で説明されるが、遺伝子解析で説明できるのは約10%。遺伝子検査で必要睡眠時間は分からない
  • 日本人で睡眠時間に関連した唯一の遺伝子はALDH2で、飲酒を介して効いていた。欧米の遺伝子は再現されなかった
  • 寝不足への弱さにも体質差があり、その68〜92%が個人差で説明される。他人との比較は二重に無意味である

参考文献と反証

各論文の「主な結果」とあわせて、相反する結果や限界(反証)も併記しています。 集団タグは研究対象(日本人/欧米など)を示します。

  1. [1]Takahashi N, Matsumoto T, Nakatsuka Y, et al. (2022). Differences between subjective and objective sleep duration according to actual sleep duration and sleep-disordered breathing: the Nagahama Study. Journal of Clinical Sleep Medicine 18(3):851-859.日本人対象 地域住民コホート(長浜スタディ)/ n=6,908・平均年齢57.9歳・アクチグラフ7日間

    結果日本人6,908人の客観的な睡眠時間は6.01±0.96時間、同じ人の自己申告は6.49±1.0時間だった。客観・主観のどちらでも標準偏差はほぼ1時間である。

    反証対象は滋賀県長浜市の住民で平均年齢57.9歳・女性が67.6%と偏りがある。アクチグラフは体動から睡眠を推定する方式で、脳波による判定ではない。

    doi:10.5664/jcsm.9732
  2. [2]Morita E, Kadotani H, Yamada N, Mitsuda Y, et al. (2025). Sleep Characteristics and Prevalence of Perceived Insufficient Sleep Across Age Groups in the Japanese Community-Based General Population: The Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort Daiko Study. International Journal of Environmental Research and Public Health 22(9):1338.日本人対象 コホート(J-MICC 大幸研究)/ n=2,091(男535・女1,556)・平均58.6歳・アクチグラフ1週間

    結果別の日本人コホート2,091人でも客観的な睡眠時間は342.3±62.2分(5.71±1.04時間)、自己申告は6.5±1.0時間で、標準偏差はやはり約1時間だった。自己申告の実測範囲は3.0〜10.0時間である。

    反証名古屋の特定地域の住民が対象で、女性が74%を占める。加速度計は手首ではなく腰に装着しており、長浜スタディとは測定方式が異なる。平均値も長浜スタディよりさらに短く、集団によって水準は動く。

    doi:10.3390/ijerph22091338
  3. [3]Amagai Y, Ishikawa S, Gotoh T, et al. (2010). Sleep duration and incidence of cardiovascular events in a Japanese population: the Jichi Medical School Cohort Study. Journal of Epidemiology 20(2):106-110.日本人対象 前向きコホート / n=11,367・自己申告(就床・起床時刻から算出)

    結果1990年代の日本人11,367人でも睡眠時間の標準偏差は男性1.2時間・女性1.1時間だった。平均は男性7.8時間・女性7.4時間である。

    反証1992〜95年の調査で、平均値は現在の実測値よりかなり長い。就床・起床時刻から計算した値で、実際に眠っていた時間ではない。

    doi:10.2188/jea.JE20090053
  4. [4]Kitamura S, Katayose Y, Nakazaki K, et al. (2016). Estimating individual optimal sleep duration and potential sleep debt. Scientific Reports 6:35812.日本人対象 実験室研究 / 健康な日本人男性15人(20〜26歳)・12時間就床を9日間

    結果眠れるだけ眠らせて頭打ちになる時間を各自について求めると、最適睡眠時間の平均は8.41時間、個人差は7.29〜9.26時間に広がった。普段の睡眠時間は平均7.37時間で、差の1.04時間が自覚のない睡眠負債にあたる。

    反証対象は20〜26歳の健康な男性15人のみで、女性・高齢者・持病のある人は含まれない。論文が併記する±の値は標準偏差ではなく標準誤差であり、ばらつきの大きさとして読むと5分の1に見誤る。

    doi:10.1038/srep35812
  5. [5]Klerman EB, Dijk DJ (2005). Interindividual variation in sleep duration and its association with sleep debt in young adults. Sleep 28(10):1253-1259.欧米対象 実験室研究 / 若年成人17人・1日16時間の就床機会を3日間

    結果18〜32歳の17人でも習慣的な睡眠時間は6.1〜10.3時間に散らばった。就床機会を16時間に広げると初日の睡眠時間は平均4.9時間増え、普段短い人ほど多く眠り続けた。

    反証個人差の一部は「必要量の違い」ではなく「普段どれだけ睡眠を削っているか」の違いを映している可能性がある。17人と少人数である。

    doi:10.1093/sleep/28.10.1253
  6. [6]Kocevska D, Barclay NL, Bramer WM, Gehrman PR, Van Someren EJW (2021). Heritability of sleep duration and quality: A systematic review and meta-analysis. Sleep Medicine Reviews 59:101448.総説・メタ解析 系統的レビュー+メタ解析 / 23論文・双生児45,328人(生後6か月〜88歳)

    結果双生児45,328人の解析で、睡眠時間のばらつきの46%が遺伝で説明された。残りの大半はその人固有の環境で、共有される家庭環境が効くのは小児期だけだった。

    反証別のメタ解析(Madrid-Valero et al., 2020)では遺伝率0.38(95%CI 0.16–0.56)で、個々の研究では0〜1まで推定値が割れており、研究間のばらつきが極端に大きい。単一の数値として断定はできない。

    doi:10.1016/j.smrv.2021.101448
  7. [7]Madrid-Valero JJ, Rubio-Aparicio M, Gregory AM, Sánchez-Meca J, Ordoñana JR (2020). Twin studies of subjective sleep quality and sleep duration, and their behavioral correlates: Systematic review and meta-analysis of heritability estimates. Neuroscience & Biobehavioral Reviews 109:78-89.総説・メタ解析 系統的レビュー+メタ解析 / 双生児研究17本

    結果睡眠時間の遺伝率の統合値は0.38(95%CI 0.16–0.56)だった。ただし個々の研究の推定値は0から1まで割れており、研究間の異質性が極端に大きい。

    反証異質性が大きすぎるため、統合値そのものの解釈に慎重さが求められる。別のメタ解析(Kocevska et al., 2021)は46%というより高い値を報告している。

    doi:10.1016/j.neubiorev.2019.12.028
  8. [8]Klerman EB, Dijk DJ (2008). Age-Related Reduction in the Maximal Capacity for Sleep—Implications for Insomnia. Current Biology 18(15):1118-1123.欧米対象 実験室研究 / 高齢者18人・若年者35人・1日16時間の就床機会を3〜7日間

    結果眠れるだけ眠らせると、睡眠時間は高齢者7.4時間・若年者8.9時間で頭打ちになり、1.5時間の差がついた。高齢者では日中の眠りやすさと眠れる最大量の両方が減っている。

    反証平均値に添えられた±0.4は標準誤差である。この結果は「必要量が減った」とも「眠る能力が落ちた」とも解釈でき、論争は決着していない。

    doi:10.1016/j.cub.2008.06.047
  9. [9]Dashti HS, Jones SE, Wood AR, et al. (2019). Genome-wide association study identifies genetic loci for self-reported habitual sleep duration supported by accelerometer-derived estimates. Nature Communications 10(1):1100.欧米対象 ゲノムワイド関連解析 / 欧州系446,118人

    結果44万人超の解析で睡眠時間に関わる78か所の遺伝子座が見つかったが、その78か所が説明できるばらつきは0.69%にすぎない。一般的な遺伝的変異すべてを合わせても9.8%だった。

    反証自己申告の睡眠時間を用いており、測定誤差が遺伝率を押し下げている可能性がある。対象は欧州系集団に偏っている。

    doi:10.1038/s41467-019-08917-4
  10. [10]Nishiyama T, Nakatochi M, Goto A, et al. (2019). Genome-wide association meta-analysis and Mendelian randomization analysis confirm the influence of ALDH2 on sleep duration in the Japanese population. Sleep 42(6):zsz046.日本人対象 ゲノムワイド関連解析メタ解析 / 日本人31,230人・追試5,140人

    結果日本人31,230人で睡眠時間に有意に関連した遺伝子座は、お酒の強さを決めるALDH2のrs671だけだった。飲酒量で調整すると関連は消え、欧米で報告されたPAX8とVRK2は日本人では再現されなかった。

    反証rs671は睡眠に直接作用するのではなく飲酒を介して効いている。睡眠時間は自己申告で、飲酒習慣の申告にも誤差がある。

    doi:10.1093/sleep/zsz046
  11. [11]Van Dongen HPA, Baynard MD, Maislin G, Dinges DF (2004). Systematic interindividual differences in neurobehavioral impairment from sleep loss: evidence of trait-like differential vulnerability. Sleep 27(3):423-433.欧米対象 実験室研究 / 健康成人21人に36時間断眠を3回反復

    結果同じ断眠をさせても成績の落ち方は人によって大きく違い、そのばらつきの68〜92%が個人の体質で説明された。誰が弱いかは睡眠履歴や性格検査では予測できなかった。

    反証21人の小規模研究で、対象は21〜38歳に限られる。36時間の完全断眠という極端な条件であり、日常的な寝不足にそのまま当てはまるとは限らない。

    原典を読む
  12. [12]Hirshkowitz M, Whiton K, Albert SM, et al. (2015). National Sleep Foundation's sleep time duration recommendations: methodology and results summary. Sleep Health 1(1):40-43.総説・メタ解析 専門家18人によるデルファイ法 / 文献312本を採用

    結果米国睡眠財団は26〜64歳の推奨を7〜9時間としたうえで、6時間や10時間も「人によっては適切な場合がある」と明記した。65歳以上では推奨7〜8時間、5〜6時間や9時間が許容範囲となる。

    反証専門家の合意形成による推奨で、実験で決めた値ではない。米国睡眠医学会は上限を切らず「成人は7時間以上」とだけ推奨しており、団体によって幅の示し方が異なる。

    doi:10.1016/j.sleh.2014.12.010
  13. [13]Boulos MI, Jairam T, Kendzerska T, Im J, et al. (2019). Normal polysomnography parameters in healthy adults: a systematic review and meta-analysis. The Lancet Respiratory Medicine 7(6):533-543.総説・メタ解析 系統的レビュー+メタ解析 / 169研究・5,273人・脳波による判定

    結果脳波で測った健常者5,273人のデータでは、総睡眠時間は10歳ごとに10.1分(95%CI 7.5〜12.8)短くなった。中途覚醒は10歳ごとに9.7分増えた一方、深い眠りとレム睡眠の割合は加齢で有意に変わらなかった。

    反証実験室で一晩測った値で、日常の睡眠とは条件が異なる。健常者に限った基準値であり、実際の高齢者集団にそのまま当てはまるとは限らない。

    doi:10.1016/S2213-2600(19)30057-8
  14. [14]Mander BA, Winer JR, Walker MP (2017). Sleep and human aging. Neuron 94(1):19-36.総説・メタ解析 総説 / 加齢と睡眠の神経科学

    結果高齢者は睡眠の必要量が減ったのではなく、必要な睡眠を検知し生成する能力が落ちているだけだ、という立場をとっている。この論争は決着していないと著者自身が明記している。

    反証反対に、就床機会を1日16時間に広げても高齢者は若年者より1.5時間短いところで頭打ちになるという実験結果(Klerman & Dijk, 2008)があり、必要量そのものが減るという解釈も支持されている。

    doi:10.1016/j.neuron.2017.02.004

よくある質問

必要な睡眠時間の個人差はどれくらいありますか?

日本人の睡眠時間の標準偏差はおよそ1時間です。つまり平均±1時間の範囲に約3分の2、平均±2時間の範囲に約95%の人が収まります。日本人6,908人を7日間アクチグラフで実測した長浜スタディでは6.01±0.96時間でした。

自分に必要な睡眠時間はどうすれば分かりますか?

目覚まし時計を使わずに眠れる休みを数日続け、睡眠時間が頭打ちになったところがあなたの必要量です。初日は溜まっていた睡眠負債の分だけ長く眠るため、判断は4日目以降にしてください。日中に強い眠気が出なければ足りています。

平均7時間を目標にすればいいのですか?

いけません。平均値は集団を代表する数字であって、個人の目標値ではありません。健康な20代男性15人に眠れるだけ眠らせた日本の実験でも、必要な睡眠時間は7.29〜9.26時間と約2時間ばらつきました。同じ年齢・同じ性別でもこれだけ違います。

睡眠時間の個人差は遺伝で決まるのですか?

一部は遺伝です。双生児45,328人のメタ解析では睡眠時間のばらつきの46%が遺伝で説明されました。ただし遺伝子を直接調べると説明できるのは約10%にとどまり、残りはその人固有の生活環境が決めています。

年をとると必要な睡眠時間は減りますか?

実際に眠る時間は10歳ごとに約10分短くなります。ただし「必要量が減った」のか「眠る能力が落ちただけ」なのかは決着していません。高齢で眠りが浅くなっても、それが健康な変化だと決めつけるのは早計です。

この記事について

文:眠りの科学 編集部

本記事は上記14本の文献に基づきます。新しい研究や反証が出た場合は更新日を改めて反映します。 内容は一般的な情報提供であり、症状がある場合は医療機関にご相談ください。